今回は、『表現者クライテリオン』で毎号掲載しているコラム【鳥兜】を公開します。
2022年11月号の1つ目のタイトルは「デジタル植民地になった日本」。
最新号、2022年1月号が2021年12月16日に発売になります。
興味がありましたら、ぜひ本誌を手に取ってみてください。
以下内容です。
コロナ禍がもたらした最大の変化は、デジタル化の急速な進展である。
リモートでできる仕事は、わざわざ職場まで出かけなくても自宅でできるようになった。会議は対面の割合が減り、オンラインに切り替えるところが増えた。買い物や食事はスマホで注文し、指定の場所まで配達してもらえばよい。ビデオ通話アプリを使えば、「Zoom飲み」もできる。
その分、デジタル産業の需要が増えたわけであるが、供給大手はほとんどが米国企業である。GAFAやビッグ・テックと呼ばれる新興企業なしに生活することなど、今では想像さえできない。
デジタル化が進んだことで、われわれの生活は以前にも増して、米国企業の提供する基礎的なデジタルサービスに依存するようになった。
少し前までは、米国に対抗しようとする機運もあった。「国産OS」や「日の丸検索エンジン」など、日本独自の規格を追求する動きが産業界や政府にあった。
米国企業の市場支配が圧倒的となった現在では、そのような試みはもう見られない。
今更、マイクロソフトやグーグルの市場を奪うと言っても現実味はないではないか。巨大な風車に突撃したドン・キホーテのように、酔狂な夢物語と笑われるのが関の山である。
デジタル化以前の工業化段階では、国産化は重要な国家目標だった。
従来は輸入に頼っていた製品を、自国で生産できるように切り替えていく。海外の先端企業に狙いを定めて技術を模倣し、必要な人材を育成する。政府は保護主義政策で国内市場を守りつつ、輸入代替を後押しする。
後発国の工業化は、そのような戦略に基づいて行われた。この時代の最も顕著な成功例は日本であった。
デジタル化時代でも国産化を進めている国は中国である。BATHと呼ばれる中国版ビッグ・テックは、最初は米国企業のコピーから始まったが、今では独自の技術やサービスを開発するところまで成長している。
その影響力は中国国内に限られているが、米国企業の市場支配に対抗するという意味では、一定の成功を収めていると言っていい。
今のところ、「デジタル・ナショナリズム」を追求できているのは中国だけである。
デジタル化が進む時代と長期デフレが重なった日本は、米国発の技術やサービスの流入に有効な対策をとれなかった。
新自由主義が世論を席巻したことで、国産化を目指す産業政策などと言えば、時代遅れと笑われるようになってしまった。
政府は、今になって経済安全保障を言い出しているが、そこで言われる安全保障はもっぱら中国への対抗で、米国や米国企業に対抗しようという意図など微塵も感じられない。
中国や韓国の企業が日本のデータを盗んでいるかもしれないとなれば大騒ぎするわりに、米国企業が行政や学校、企業のサービスを一手に担っている現状には誰も文句ひとつ言わない。
以前、米国企業の情報技術の背後には、米国政府の諜報網があるとエドワード・スノーデンが告発したにも関わらず、である。
公官庁まで米国企業にシステムのクラウド化を依存している日本は、今や立派なデジタル植民地である。深刻なのは、日本人にその意識がないということだ。
いったん植民地化が進んでしまうと、その状態から脱却するのは容易なことではない。日本は軍事面だけでなく、経済面でも、これからますます独立性を失っていくのだろう。
そう考えると、「デジタル・ナショナリズム」を追求する中国は、なかなか見上げたものだと言わなければならない。
(『表現者クライテリオン』2022年1月号より)
他の連載は『表現者クライテリオン』2022年1月号にて。
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