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【森永卓郎氏インタビュー】ザイム真理教という 「カルト」による国家破壊 (一部公開)

啓文社(編集用)

啓文社(編集用)

表現者クライテリオン2024年1月号より一部公開

 

日本は世界で類を見ない健全財政

 

藤井▼森永先生とは『朝まで生テレビ!』や『正義のミカタ』などのTVメディアでご一緒することが多いのですが、今回は経済学者、大学人としてお話を伺いしたいと思っています。

 先生は最近『ザイム真理教──それは信者8000万人の巨大カルト』(フォレスト出版)というご著書をご出版されましたが、この中で財務省の緊縮思想は「カルト」であると論じておられます。まずはカルトを「事実無根の宗教的テーゼ(命題・主張)を(例えば「信じないと地獄に落ちるぞ」というような)脅しを通して信じることを強制する組織や運動」と定義した上で、実際に財務省がやっていることを解釈すれば、カルト教団と言えると論証されており、こうした議論の進め方は至って学術的だと言うことができます。
 そもそも日本の復活や命運を考える上で、財政規律のあり方は最も重大な影響を及ぼす要素とも言いうるのであり、かつ、その財政規律を規定しているのが「ザイム真理教」であるとすると、森永先生が論じているザイム真理教のカルト問題は、日本にとって最重要問題だと言うことになります。ついては今日はぜひ、森永先生に「ザイム真理教」の実態をご教授いただけたらと思います。よろしくお願いします。

森永▼よろしくお願いします。私はメディアの仕事を半世紀にわたってやってきたのですが、その中では「これを言うと即刻降ろされる」というタブーがいくつかあるんです。その内の一つはジャニーズ問題でしたが、それと同レベルのものがこの財務省の問題です。
 この「ザイム真理教」の問題というのが実はものすごく日本経済を衰退させる原因になったのだと考えています。

藤井▼私もメディアとアカデミズムの双方で仕事しておりますが、全く同感です。日本経済の衰退の原因になったことについて具体的にお教えいただけますか。

森永▼二〇一二年末に安倍政権が成立して異次元の金融緩和と財政出動を同時に行いましたよね。景気の悪い時にはマクロ経済政策として金融緩和と財政出動をやれというのは実はマクロ経済学の教科書に普通に書いてあることです。その結果、それまでずっとマイナスだった物価上昇率が、異次元の金融緩和が始まった途端にどんどん上がっていき一年足らずでほぼ二%の目標まで到達したんです。経済政策の結果がこんなに教科書通りに綺麗に出ることは実はあまりないんですよ。
 これを見て「ああ、これでようやく日本が長い間続いた低迷から脱出できるんだ」というふうにその時は確信したんです。
 ところが二〇一四年の四月に消費税を八%に引き上げてしまった。これは金融緩和というアクセルを踏みながら消費増税というブレーキを踏むというおかしな行動です。これによって、たった一年で元のデフレに戻ってしまったんです。なぜこんなバカな経済政策が取られたんでしょうか?
 あるいは、国民負担率、つまり、税と社会保障負担が国民所得に占める比率ですが、それがどんどんどんどん上がっていて、特に二〇〇〇年代以降は急速に上がっています。三十年前は国民負担率は三割程度だったんですが、今や五割ほどになっている。これで生活が楽になるはずがない。なぜこんなにとんでもなく国民負担率が上がったのでしょうか?
 常識的な、当たり前のことをやれば確かによくなるのにやらない。むしろ逆のことをして経済を悪化させる。これの原因が、財務省が作り出した神話にみんなが乗せられたこと、つまり「ザイム真理教」問題ということなんです。

藤井▼本当に愚かなことですね。財務省が作り出した神話とはどんなものでしょうか。

森永▼一言で言うなら「国の借金がやばい」、というものです。この神話を作り出すために財務省は数多の噓で塗り固め事実を隠蔽しています。実は今国全体で抱えている借金が一六〇〇兆円ぐらいある一方で資産も一一〇〇兆円あります。財務省は世界で一番借金で首が回らない国は日本だと喧伝していますが、資産負債差額、つまり実質的な本当の借金というのはわずか五四〇兆円です。これはGDPとほぼ同じです。GDPと同程度の借金を抱えているというのは先進国としてはごくごく普通の姿です。
 それから私は通貨発行益と呼んでいるのですが、こういう仕組みもあります。国が国債を発行してそれを日銀に買ってもらいます。放っておくと貨幣の流通速度が下がっていくので、中央銀行は通貨供給を増やしていかないといけません。ですので基本的には中央銀行保有の国債というのは右肩上がりでずっと増えていきます。政府が発行した国債をどんどん日銀が買うわけです。政府はこの日銀保有の国債を償還期限が来る十年ごとに借り換えます。永久に借り換えを続けていけば元本を返す必要はありませんよね。一方、政府が日銀に支払った利払いはどうなるかというと、日銀が引っ張るごくごくわずかな手数料みたいなものを引いて全額国庫に戻ってくるんです。つまり元本は返す必要がなく、利払いも実質ない。元本も利払いも必要のない借金というのはないのと一緒なので、日銀に国債を買わせた瞬間に実質的に借金が消えるわけです。
 アベノミクスの時はなんと年間七、八〇兆円の国債を日銀に事実上引き受けさせて、通貨発行益を莫大に生み出しました。日銀が持っている国債が今五百数十兆円あります。先ほどお話ししたように政府の実質的な借金は約五〇〇兆ですが、政府が握り込んでいる通貨発行益も五〇〇兆、二つ合わせるとちょうどゼロなんです。つまり今日本は借金が一円もないという、世界で例のないような財政状況を実現しているということなんです。
 さらに言えば、財政収支もほぼ赤字がないんです。三年前、二〇二〇年度はコロナがあったので八〇兆円のプライマリーバランスの赤字を出しましたが、今年度予算ではこのプライマリーバランスの赤字はたった一〇兆円になっています。この後使い残しが出たり税収が上振れしたりすればこっちもほぼゼロになる。
 つまり借金はないし財政赤字もないにもかかわらず財務省は「借金が多すぎて首が回りません。財政赤字でとんでもないことになってます。だから増税が必要なんです」と言い続けているわけです。これはカルト教団が信者を騙 すときの手段と同じですよね。あなたには悪霊がついてます、その悪霊を放っておくとこの悪霊はあなただけじゃなくて孫の代まで災難をもたらします、だからその悪霊から逃れるためにこの一〇〇万円のツボを買いなさい、と言っているようなものです。
 財務省はこれ以外にもこのような詐術を多数働いています。例えば、消費税はどんどん上げていかないといけない、少なくとも二五%までは一直線に上げるんだと言っています。例えば財務省は自身のホームページに、先進各国 みんなが二〇%以上の消費税を取ってるのであって、これが世界の常識だ、という印象をもたらすグラフを掲載し、これこそが消費増税が日本に必要な理由だと主張しています。そのグラフにはOECD諸国+αが並んでいるんです が、その中で一カ国だけ漏れがあるんです。それはどこかというと、実はアメリカなんです。
 つまり、アメリカには消費税はないんです。世界一の経 済大国アメリカは、消費税なんてなくても財政破綻なんて 何も起こさず立派に成長し続けている。この一例だけで、 消費税がないと財政が回らないという財務省の主張は「噓」 だということがスグ分かるわけです。

 

「ザイム真理教」が信者を増やしていく仕組み

 

藤井▼日本の財政は実際は至って健全なのに、世界一危な い経営をしているという事実無根のテーゼを噓で塗り固め ることによってでっちあげているということですね。この 神話を国民みんなに信じさせる力、あるいは組織としての 仕組みはどのようなものなのでしょうか。

森永▼そこにもカルト教団との共通性があります。カルト 教団では信者には献金を繰り返させて厳しい暮らしをさせ る一方、教団の教祖や幹部が豪華な暮らしをしているということがあります。これを「ザイム真理教」に当てはめると、日本ではまず公務員が民間企業より年収が高い。国家 公務員の平均年収は民間企業の正社員と比べて約三〇%高 くなっています。民間企業の給与調査をするとき大手企業 だけを調査して、その水準に合わせているからです。
 教祖に近づくとさらに良い暮らしができます。財務官僚 の一番おいしい天下り先は日本銀行総裁だと言われてるのですが、その年収は三五〇〇万円です。これは国務大臣よりも高い。しかも個室と秘書と海外旅行と交際費と専用車という豪華五点セットが漏れなくついてくる。財務省のキャリア官僚は、この豪華な日銀総裁までいかなかったとしても、非常に豪華な天下り先が退職時に準備されています。しかも、「渡り」と言いますが次々に天下り先を転々として、そのたびに何千万円という退職金をもらう。
 布教活動にもものすごく熱心です。最大のターゲットが総理大臣を中心とした政権幹部の人たちですが、実はそれだけではない。例えば民間の有識者、メディアの人たちにも徹底的に布教活動をします。実際に私が『ザイム真理教』を出版した後、色々なコメンテーターに話を聞きに行ったんです。あなたのところに財務省の官僚は来ますか、と。驚くべきことに、ほぼ全員が財務官僚がご説明に来る、あるいは来たことがあると答えたんです。それぐらい財務官僚はこの布教活動に熱心なのです。これもカルト教団と共通する部分です。

 最近許し難いなと思ったのは、財政資金を使って小中学生を対象とした布教活動、洗脳活動を始めていることです。今全部の問題文に「うんこ」というワードを使う「うんこドリル」というのがすごくヒットしているのですが、そこと提携して「うんこ税金ドリル」というものを作ったのです。

藤井▼政権の洗脳だけでなく、言論人、芸能人を洗脳し、メディアを通して国民、それも子供まで洗脳していくわけですね。さらに最初におっしゃったようにメディアではこれを指摘すること自体がタブーとなっている。

森永▼そうです。本来であればこうした真実を伝えるべき大手メディアは完全に「ザイム真理教」のサポーターになってしまっています。『ザイム真理教』を出版してから私は三カ月間、東京キー局のテレビに一回も出させてもらえませんでした。週刊誌、タブロイド紙、ネットメディア、BSのテレビ、地方のテレビはバンバン取材依頼が来て、私はもう出られる限り全部出たんですが、一つもお呼びがかからなかったのが、大手テレビ局と大手新聞でした。

藤井▼なぜ大手メディアでは扱えないのでしょうか。

森永▼一つは消費増税の時になぜか宅配の新聞だけは八%の軽減税率になっているんです。でも週刊誌やタブロイド紙だって同じように報道の役割を果たしているんですよ。なのに大手新聞だけが軽減税率が適用されている。もう一つは、大手五社の新聞社は一九五〇年代から七〇年代ぐらいに当時の大蔵省から国有地を払い下げてもらって本社ビルを建てている。こうした財務省からの優遇が連綿とあるわけです。…

(本誌に続く)

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森永卓郎(もりなが・たくろう)

経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。57年生まれ。80年、東京大学経済学部卒業。日本専売公社、日本経済研究センター、経済企画庁総合計画局、三井情報開発総合研究所、UFJ総合研究所などに勤務。専門分野はマクロ経済、計量経済、労働経済。主な著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学 給料半減が現実化する社会で「豊かな」ライフ・スタイルを確立する!』『親子ゼニ問答(森永康平氏との共著)』『相続地獄 残った家族が困らない終活入門』『長生き地獄資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋』など多数。

 

 


〈編集部より〉

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特集タイトルは、

「政治と宗教」を問う

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