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【岸田文雄/藤井聡 対談】「新自由主義」と決別し、公益資本主義を実現することが必要である

啓文社(編集用)

今回は『表現者クライテリオン』2022年1月号の掲載されている対談の冒頭を特別に一部公開いたします。

公開するのは、「岸田内閣、成功の条件―「新しい日本型資本主義」とは何か」特集掲載、
岸田文雄内閣総理大臣×藤井聡 編集長 の対談です。

以下内容です。

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 本対談は岸田文雄総理が自民党総裁に選出される前の令和三年二月七日に放送されたTOKYO MXテレビ「東京ホンマもん教室」にゲストとして出演した折りに行われたものである。岸田総理が第一〇〇代総理に就任するにあたって掲げた「新しい資本主義」の理念の原点を直接訴えた発言を掲載する。

 

「新自由主義」と決別し、公益資本主義を実現することが必要である

藤井聡(以下藤井)▼

今日はお時間いただき、本当にありがとうございます。

岸田先生とは、当方が安倍内閣で参与をさせていただいていた時に、外務大臣、そして、自民党の政調会長をお務めだったこともありよく色々とご相談させていただいておりました。

岸田文雄(以下岸田)▼

はい、あの時はお世話になりました。貴重なご指導をありがとうございました。

藤井▼特に政調会長をなさっていた時には、よくお部屋までお邪魔させていただきましたですね。

岸田▼本当にね、政調会長室まで度々藤井先生にお越しいただいて。

藤井▼その時のよしみと言いますと非常に恐縮ですけれども、こういうオファーにもお応えいただき、本当にありがとうございます。

岸田▼とんでもない。大変光栄なことで、今日は楽しみにして来ました。どうぞよろしくお願いいたします。

藤井▼今日はまず、岸田先生がいつもご主張されている「公益資本主義」について、先生のお考えをお伺いしたいと思っております。

岸田▼はい。

藤井▼一般の方には「公益資本主義」と申し上げても、耳なじみがないかもしれないんですけど、これは、岸田先生が特に重視しておられるものの一つではないかと拝察申し上げております。そのあたりからぜひ、お話をお伺いさせていただきたいと思います。

岸田▼私は令和二年の総裁選挙の時、この公益資本主義の理念に基づいて、「新しい資本主義」を考えなければいけない、という言い方で資本主義のありようについて訴えたわけですが、これを考える場合に、「分配の問題」と「持続可能性の問題」、これらをしっかり考えないといけないと訴えました。

 資本主義ですから、「儲けること」、これは大変重要なことです。しかし儲けるだけでいいのか、ということを問題意識として、持っていました。儲けたものを、どのように分配して、誰がその儲けを使って幸せになっていくのか、ここまで考えないとですね。

藤井▼そうですね。

岸田▼今まで新自由主義という資本主義が、一九八〇年代頃から議論されてきましたが、これは要するに「競争を大事にする」という資本主義です。

もちろん、競争は大事なことなんですが、競争が目的になってはならない。儲けた後、これをどう分配するのかが大事なわけです。今までの資本主義ですと、ややもするとROE重視、株主重視になってしまう。

藤井▼おっしゃる通りです。ROEというのは「Return OnEquity」、日本語では自己資本利益率。投資家が投下した資本に対して、企業がどれだけの利潤を上げられるのか、の割合で、これが高ければ、「株主」は配当金なり何なりで効果的に「稼ぐ」ことができる。

だから投資家たちはこのROEが高い企業の株を買おうとします。で、株をたくさん買って欲しい企業の側もROEをできるだけ高くしようと努力する。そして最も手っ取り早くROEを上げる方法が、賃金をできるだけ下げて「利益」を多く出す、という方法です。

こうすると、ROEの分子が上がるから必然的にROEが高くなる。つまり多くの経営者は株を買って欲しさに賃金を削り続けるというわけです。まさに株主重視の態度ですよね。

 しかも、酷い企業になれば、株主に媚びるあまり、利益の大半を株主に配当するなんていうことをする。その結果、資本家はどんどん儲かる一方、労働者の賃金はどんどん下がるわけです。

こういう資本主義は一般に「株主資本主義だ!」って言われて今、徐々に批判され始めてる、っていうわけですね。

岸田▼おっしゃる通りです。もちろん株主も大事なんですけど、それだけ大事にしてちゃいけない。それ以外にも従業員とか、それから取引先とか、それから企業が立地している地域社会、こういったところにも利益をしっかり分配していくと皆が幸せになれる。

藤井▼そうですね。そういう資本主義が、先ほどお話しした株主資本主義に対応する「公益資本主義」ですね。

岸田▼そうです。そういった資本主義、公益資本主義をこそ考えるべきではないか、こういったことを訴えてきたわけです。

藤井▼そのお考えには当方、心から賛同いたします。

過去のデータを見ますと会社の経常利益は、過去二十年の間に平均で二・五倍くらいになっている。一方で株主の配当金の平均は五倍くらいになってます。

なのに、僕らのような普通の労働者の給料は、全く増えていない。完全にこの二十年の間、横ばいになっています。

つまり、今の会社は、儲けたお金を株主ばかりに配分して、一般の従業員には配分しない、っていう傾向がどんどん強くなっている。

この不均衡を是正して、株主が独り占めしているような会社の利益を、従業員とか取引先とかに配分していくことが、日本全体の「公益」を増進していく、ということは明白ですよね。

岸田▼そうですね。

「短期主義」から「長期主義」への転換が「成長と分配の好循環」を導く

藤井▼例えば、株主が会社の利益を独り占めしていることで進んでいるのが、格差や貧困の問題ですよね。

岸田▼そうですね。それであともう一つ、今までの資本主義の考え方で考えさせられるのは、持続可能性の問題です。

長期的な視点と言っていいかと思うんですが、要は企業の経営のありようを考えても、単年度主義はよろしくない。それぞれの企業が四半期ごとに決算の開示を求められるようでは、各企業がどうしても短期的な視点になってしまう、というのもよろしくない。

企業というのは長期的にものを見ないようになると、投資をしなくなるし、その結果、企業の内部留保がどんどん貯まってしまうことになる。このあたりも何とかしなければいけない。

藤井▼それも大問題ですね。

岸田▼やみくもに貯めこむだけじゃ、何も話が進まなくなる。それぞれの企業が長期的な視点を持てば、その時点その時点での「儲け」を様々なものに適切に分配していくというようになっていくんだと思います。

藤井▼そうですね。

「投資」という言葉と「投機」という言葉がありますけれど、やはりこれからは投機でなく投資をこそ奨励しなければなりませんよね。「投資」というのは未来に向けて、例えば、防災や研究開発、あるいは環境改善等のために行うものであって、これは「資本主義」においてきわめて重要です。

何と言ってもそういう投資は資本主義の全ての出発点である「資本」を充実させるからです。一方で「投機」というものはありていに言うと「ギャンブル」みたいなもの。

あっちの株が上がりそうだから買って、こっちの株は下がりそうだから売り飛ばす、というだけの話。資本の形成も充実も何もあったもんじゃない。こればっかりやってると、単にパイを食い合うだけですから、資本主義が全然進まなくなる。

SDGsなんて全然進まないし、環境も改善できないし、防災も進まない。そういう意味で、短期的ではなくて長期的に考える、そして株主のことだけ考えるんじゃなくて従業員や社会全体を考える、そうすることで、公益が増進する。これが私のずっと拝聴している岸田先生がおっしゃる公益資本主義の考え方なのだと理解しています。

岸田▼そうですね。「公益資本主義」、「新しい資本主義」といった言葉で今申し上げたようなことを皆さんに訴えてきた…(続く)

(『表現者クライテリオン』2022年1号より)

 

 

 

他の連載などは『表現者クライテリオン』2022年1号にて

『表現者クライテリオン』2022年1月号 「岸田内閣成功の条件」
https://the-criterion.jp/backnumber/100_202201/

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