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【鳥兜】日本のエリートは「中央集権化」の時代を担い得るのか?

啓文社(編集用)

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皆さん、こんにちは。
『表現者クライテリオン』編集部です。

 

『表現者クライテリオン』最新号より、巻頭コラム【鳥兜】『日本のエリートは「中央集権化」の時代を担い得るのか?』を公開します!

この機会にぜひ、お読みください。

 

 

日本のエリートは「中央集権化」の時代を担い得るのか?

 

 三年前に世界全体で時価総額が二〇兆円程度だった仮想通貨(最近は暗号資産と呼ばれるらしい)市場は、コロナ禍における世界的な金融緩和や財政出動で過剰な流動性が生まれたことに加え、テスラのような大企業の参入や大手取引所の上場などが重なり、二〇二一年に三七〇兆円規模にまで膨れ上がった。

しかしその後、何度かにわたって暴落し、二〇二二年春までに時価総額の三分の二が失われた。

 

 暴落の要因は、いくつかある。例えば二〇二一年秋には、中国の政府と金融当局が国内での仮想通貨取引や採掘を全面的に違法化した。

中国人民銀行は仮想通貨の取引を禁止するにあたり、「仮想通貨が伝統的な通貨と同じように流通することがあってはならない」「海外の取引所が中国本土向けのサービスを提供することも禁止する」「人々の財産を守り、経済・金融・社会の秩序を維持するため、仮想通貨の投機、関連する金融活動、不正行為を断固として取り締まる」と宣言した。

これだけ聞けば非常に健全なことのように思えるが、将来的に政府主導での「デジタル人民元」を普及させるという思惑も背景にあると言われている。

 

 また二〇二二年に入ると、インフレの深刻化を受けて米国の金利が引き上げられたことで、株式市場などとともに仮想通貨市場も急速に冷え込んだ。

そして前年に鳴り物入りでビットコイン決済を導入したテスラが早々にそれを停止したことや、ステーブルコイン(特定の法定通貨にペッグし価格を安定させることで、仮想通貨市場のリスク低減に貢献するとされる特殊な仮想通貨)の一種であるUSTがドルペッグの維持に失敗したこと、世界で三番目に大きい仮想通貨取引所のFTXが資金管理のずさんさもあって破綻したことなどをきっかけに、全銘柄にわたってさらなる急落が続いた。

 

 仮想通貨市場の不安定性などは以前から知られていたことだが、改めて興味深いと思わされるのは、「特定の政府や企業による管理を必要としない、分散型で民主的な仕組み」であることがブロックチェーンを用いた仮想通貨の利点とされていたにもかかわらず、すっかり大国政府の動向や大企業の思惑に運命が委ねられるようになってしまっていることである。

技術的には今も分散型の仕組みで運営されているとは言え、人間が扱うものである限り、結局のところ中央集権的な社会の構造に服属することになるのである。

 

 しかも、安全保障上の緊張や経済の混乱が深まる時代には、人類が本能的に持っている社会的免疫システムが働いて、中央集権的なガバナンスが強化される。

というより、その強化に成功した国家、社会、組織だけが危機を生き延びるのだと思われる。仮想通貨がアナーキズム的な理想を追いかけて投機家の墓場と化しているのは、この時代状況を象徴すまでに時価総額の三分の二が失われた。

 

 暴落の要因は、いくつかある。例えば二〇二一年秋には、中国の政府と金融当局が国内での仮想通貨取引や採掘を全面的に違法化した。

中国人民銀行は仮想通貨の取引を禁止するにあたり、「仮想通貨が伝統的な通貨と同じように流通することがあってはならない」「海外の取引所が中国本土向けのサービスを提供するる一つの事例に過ぎない。

 

 中央集権制というのは、ジョージ・オーウェルが『一九八四年』で描いたような、人々の生活様式や思想信条に至るまでくまなく制御する管理社会を意味するわけではない。

中国の体制のように「リスク分子」への取り締まりが厳しいことはあるにしても、本質は「社会的に重要な決定」を中央のエリートが責任を持って担うという点にある。

 

 我が国は、「優れた中央集権制」の確立が生存競争の行方を決める時代に適応できるだろうか。

先行きが暗いと思わされるのは、日本のエリートが首相を筆頭に「重要な決定を先送りにし、あるいは他国に委ねながら、下らないことに要らぬ口を挟んで人気取りに走る」ことを習慣化してしまっているからだ。「人口の高齢化」よりも「エリートの幼稚化」のほうが何倍も恐ろしいのだということに、我々は気づかなくてはならない。

 

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