【平坂純一】ラッキーストライクという文芸運動がある

平坂純一

平坂純一 (雑文家)

「本を読んでくれ!とにかく、スマホはいちばん身近な敵なんだ!」 

 

・・・と、メールマガジンで叫び立てる矛盾、お久しぶりです。平坂です。 

https://twitter.com/ceo_01music/status/1715576246132941037 

まず、このポストと映像をご覧ください。 

仕事と時間に終われて何もできない男は別にいいとして、金やブランドの客観性を神とするAI人間、ミキサーにかけられた羊、グローバル企業の商品を買い漁るヒト科の何か、盛り自撮りで自意識の穴埋めをする女性。うーむ、「自意識の内出血」マックス・ウェバー。印象的なのは、スマホをガン見している者は穴に落ち、本を読む人は救われている絵ですね。 

 これらは何を意味するのでしょうか?コメント欄でお待ちしています。 

 

この頃は、同人誌『ラッキーストライク』に書き下ろし(おそらく3万字)を書いています。同人というとマンガや萌え絵その他を連想するかもしれませんが、ゴリゴリの言論・批評好きのための雑誌です。文芸フリーマーケットは各地で開催されており、小説や趣味系の随筆が中心の催しの中でもいささか批評集は珍しいようで売れ行きも好調。 

詳しくは公式のツイッターでご確認いただきたい。 
批評誌『ラッキーストライク』 @LSBAT_1 

 模索舎様 、バックパックブックス様 、Seesaw Books様 、本屋B&B様 ・古書ソオダ水様 ・MoMoBooks様 、本のあるところajiro様 、で取り扱っています。 

*2023/10/27 加筆

BOOTHというインディーズ書籍中心の通販サイトでも購入が可能です。 

https://booth.pm/ja/items/3289852 

 

この雑誌、いったい何なの?と問われますと、端的に、人文学中心に評論の若手を発掘する機関誌と答えるべきでしょう。近年、大手の文学誌『すばる』と『群像』から「評論部門」の新人賞がなくなりました。そこで、若手の批評家の登竜門たらんと、第2回すばるクリティーク賞受賞者で日本文学研究者の赤井浩太氏(@rouge_22)、フランス文学に詳しい袴田渥美氏(@Arcane_Dix_Sept)、そして、Twitterの批評界隈で有名なミスター氏(@hahaha8201)ら20代の青年たちが立ち上がった!・・・というお話。ミスター氏から当メルマガの拙稿「秋山祐徳太子さんを偲んで」経由でオファーがあったと記憶している。 

 

今回で3号、来年1月に刊行予定です。 

わたしも商業誌に書けないラインの言葉と論理を展開しております(笑)、保守系以外の知性に触れる意味でも、ぜひ、1−2号含め、お手に取っていただきたい。 

 

しかし、青年たちの勢いに乗って、私も大人たちに言上申し上げたいのは、もう小林秀雄や丸山眞男のような現代文の教科書に載るような評論は、学者さんなど「高等教育のエライ人」やある種の「有名人」だけが生産していいことになったのか?という点につきます。 

 

私のような在野の書き手からすれば、この傾向は「知のステーティズム」であり、本が好きなこと、物を考えること、あれこれ論じること、これらが人間の根本的で生来的な欲求であることを忘却させる流れにあると断じたくなる。在野ならば書けるジャンルが選べて、どんな活動でもできる利点があり、横断的な知に近づける分、大学の専門主義から距離を置けるのだから、言論誌の「新人を発掘しない宣言」は摩訶不思議な自殺行為です。 

 

Twitterのどこで読んだか忘れましたが、「評論家がウザい」という物言いも流行っているそうです。上から言われたくない、こち固くてマニアックだとか。流行主義者もまた一つのマニアなのですが。確実に言えるのは、インターネットの登場で「何かのジャンルに詳しい人やそれを整理できる人に対する敬意」などは、そこに権威がぶら下がってもいない限り、全くなくなったようです。 

 

彼ら「批評家ウザがり勢」はレコード、書籍、演劇等に本当に熱くなったことがあるのか問いたい。何でもない店頭のPOP、CDのライナーノーツ、書籍の解説文、劇場の小冊子、それらで言語化による知の深みへ向かう楽しみを体験できない世代なのでしょう。ネットには数多の「感想」が転がっているのだから、無理もありません。 

 

テキヤの売り込み文句と同じで、批評家の言葉を疑ってかかるのもまた考える訓練だったはずです。結局は、Googleの誰が書いたか分からない匿名のレビュー=私的な言葉の群れの方が、読んでいて傷つかないで済むわけでしょう。確かに、美輪明宏が「批評家=表現者のなり損ね(芸術の域に達した小林秀雄の文章を除く)」と申していたのも間違いではなく、批評家の言葉には魅力がなければいけません。 

 

先日、西部邁『保守思想のための39章』を読み返していましたら、「リテラシー(読み書き)にビデオクラシー(映像支配)が勝るだろう」と、なんと2000年頭の段階で断言されている章があるから驚きました。文章を真面目に読んで、人に会って膝を詰めて論じあう、議論の種になるまとまった文章を著すような「真面目さ」は雲散霧消して、サムネイルとタイトル勝負の動画サイトが言論の影響力を上回りました。西部先生の予言通りのようです。 

 

ただ、希望はあります。ラッキーストライクの動きに賛同する出版社が現れたことです。人文書院さんのnote「批評の座標 じんぶんのしんじん」という企画は注目すべきです。 

https://note.com/jimbunshoin/n/n90301295091a?magazine_key=m2807e120792f 

・「時代を切り取る良質な文章を世に出す」という出版の基本に立ち返り・・・人文知が無力化しつつある現代社会において、現実とその一歩先を照らすような知の言葉は歴史からどのように汲み取ることができるのか、あらためて問われているように思います。 

・近視眼的にならず、過去の焼き直しにもならない、そんな言葉を探るための「実験の場」・・・新しい書き手の躍動の場になること、そして学術的・専門的知識にとどまらない「人文」というジャンルの豊かで刺激的な知の営為となること 

・毎月2名の新人批評家・ライターたちが過去の日本の批評家・著述家たちを紹介します。かつて日本の人文知の在り方を規定していた批評家たちの仕事を振り返ることで、いま読まれるべき・発すべき言葉を探っていきます。 

 

これは・・!本来は保守がやるべき仕事ではないか。 

かの出版社さんはフロイトやマルクスを得意とされる、つまり、左派系、そして、20―30代の執筆陣の中にも右派や保守を標榜する若手はいらっしゃらない。そこに私が飛び込んで書いておきました。 

 

【批評の座標 第12回】西部邁論――熱狂しないことに熱狂すること(平坂純一) 

https://note.com/jimbunshoin/n/n1ff435685c39 

 

結構、わたし史上いちばんよく書けた気がします(笑)ご笑覧ください。ちなみに、浜崎洋介先生からお褒めの私信を頂戴いたしました。 

 

これを読んでいる保守系の青年たち!大人しく単位を取ってなんとなく卒業するんじゃありません、もっと読んで話して、そして、先述の動画のようなスマホを持ってブラブラ歩いている疲れた人間を蹴っ飛ばすつもりで、何か書いてみてもいいかもしれません。絶望するにはまだまだ早いのですから。 

 


〈編集部より〉

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