先日、ビル・ミッチェル教授との共著『インフレ時代の「積極」財政論』(https://www.youtube.com/watch?v=P8fcrDm2Eyw)を出版いたしましたが、この新著に基づいてこの度、東京MXテレビの東京ホンマもん教室で1時間かけて解説差し上げました。
ところが、東京ホンマもん教室が始まってもう4年目なのですが、その中でダントツで、Youtube動画のアクセス数が少ないのです!
確かに『インフレ時代の積極財政論』と言えば少々地味なタイトルかも知れませんが、今の岸田内閣が取り組まねばならない財政政策を包括的に論じたものであり、極めて重要な内容を取り扱っているものですから…大変残念でありました…。
ついては、本メルマガの読者の皆様にだけでも、そこでの議論の一部を、詳しくご紹介差し上げたいと思います。
下記にお示しするのは、
「デフレじゃなくて、インフレになれば、例えそれが、現下の日本のように単なる円安で産み出された「コストプッシュ・インフレ」(スタグフレーション)であっても、もうインフレだってだけで、国内投資が活性化され、経済が活性化していくのだ!」
というお話し。
これは世間一般どころか、専門の経済学者達ですら認識していない、超重要論点、です。
是非、下記ご一読下さい!
……
物価が上昇していくインフレは、物価が下落していく「デフレ」に比べると、実に多くのメリットがある。
その代表的なものが、インフレになれば、その原因がデマンドプルであるかコストプッシュであるかに関わらず、それがインフレだというだけの理由で、民間企業の投資は拡大していく事になる、というものである。
実際、下図に示した様に、投資(図中の実線)は、インフレ率が下げ止まり、上昇し始めた2021年半ばから急速に拡大し始め、(2019年10月の消費増税と2020年3月のコロナ上陸によって)低迷していた頃の85兆円程度という水準から実に15兆円も拡大し、今や100兆円近くの水準にまで至っていることが分かる。
図 投資(名目)およびインフレ率の推移
繰り返すが、このインフレはコストプッシュ・インフレであり、消費者が物価高騰のために余分に支払ったおカネは基本的に全て海外に流出しているのであり、必ずしも国内の企業に回ってくるおカネを増やしているわけではない。それにも関わらず、インフレになって物価が高騰してくれば、投資は増えていくのである。
これは次の理由による。
たくさんのおカネを手元に持っている人を考えてみよう。この人は、今おカネを使うことも、貯金をしておいて将来使うこともできる。この「手元のおカネを、いつ使うか」という意志決定において、デフレの場合なら、「今じゃ無くて、将来に使うようにしよう」と判断する人が多くなる。なぜなら、デフレの場合、モノの値段はどんどん下がって行くわけで、今買うよりも将来買った方がより多くのモノが変えるようになるからだ。デフレというのは「モノの値段が下がっていく現象」だが、それは逆に言うなら、「おカネの価値が上がっていく現象」とも言えるのであり、手元にあるおカネは、長く持っていれば持っているほど、ただそれだけのことで価値が高くなっていくのである。だから結局、デフレの時には皆、手元にあるおカネを使って投資をしなくなっていくのである(もちろん、借りてまで投資しようとする人はもっと少なくなる)。
ところが、インフレの場合、モノの値段はどんどん上がっていくわけだから、「将来使うより、とっとと早く買ってしまった方が、より多くのモノが変える」という事になる。インフレはデフレと逆で「モノの値段が上がっていく現象」である以上「おカネの価値が下がっていく現象」なのだから、手元のおカネを持っていれば持っている程、価値がどんどんなくなってしまう。だから、いち早く使ってしまった方が「合理的」なのである。だから結局、インフレの状況では、その原因が何であれ、手元のおカネを使って積極的に投資する様になるのである。
実際、上記の図に示したように、インフレ率が上がれば投資は拡大し、インフレ率が下がれば投資は縮小している。両者の統計学的関連性を、相関分析という統計学的方法で分析したところ、両者の相関係数が「0.85」という水準となった。この相関係数とは、両者の関係が無関係の場合は「0」、完全に相関している場合は「1」となる尺度で、「1」に近ければ近いほど両者の関連が強いと判定される事となるのだが、その値が「0.85」と1に非常に近い水準だったわけである。これは、インフレ率と投資との間に極めて強い統計学的関連があることを意味している(ちなみに、投資はインフレ率のみに影響を受けるだけでなく、消費税率にも影響を受けることから、その影響を排除するために2019年の消費増税以後に絞って相関係数を求めると、0.90というさらに強い関連性があることが示された)。
ちなみに、この関係は、「実質投資」においても、下記図の様に確認されている。
つまり、ただ単にモノの値段が高くなったからそれに釣られて支払う額が増えた、というだけでなく、「モノの値段が高くなったら、通常ならば、各財の『購入する個数』が減っても不思議ではないにも拘わらず、『購入する個数』自体が拡大しているのである!
図 投資(実質)およびインフレ率の推移
つまり、日本経済、そして産業の発展にとって要となる民間の投資は、仮にそのインフレがコストプッシュ型であったとしても、インフレになりさえすれば着実に拡大する事になるのである。これはインフレの巨大なメリットの一つである。
(こうした実証的事実を踏まえた上で、『インフレ時代の「積極」財政論』をさらに論じて参ります。是非、下記の番組動画
https://www.youtube.com/watch?v=P8fcrDm2Eyw
ならびに書籍,
https://www.amazon.co.jp/dp/4828425764
をご参照下さい!)
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