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『表現者クライテリオン』メールマガジン

【藤井聡】イラン問題を、旧態依然とした「ホシュ/サヨク」対立だけで議論することの愚。

From 藤井 聡(表現者クライテリオン編集長・京都大学教授) 

イラン情勢は、
まだまだ、予断を許さない状況が続いています。

もちろん、
「全面戦争だけは避けたい」というアメリカ・イランの
共通の認識の下進められたギリギリの報復合戦により、
イランからの報復が「限定的」なものとなり、
そのイランに対するアメリカの再報復も、
「限定的」なものとなったことを受けて、
最悪の事態」は回避されてはいます。

日本政府もそうした判断の下、
安倍総理も、一旦中止と報道されていた
中東訪問の中止をとりやめ、
公式に中東に訪問するに至りました。

ですが、イランのアメリカへの報復直後の緊張状態の中、
イランが「ミス」によってウクライナ機を撃墜したということを
イランが認めたことで、状況がまた、新しい局面に
入り始めています。
http://www.news24.jp/articles/2020/01/12/10576891.html

このウクライナ機撃墜を契機とした
反政府デモがイラン国内で行われています。
https://www.cnn.co.jp/world/35147903.html

折りしも、このイラン危機以前から
イラン国内は混沌としており、
反政府デモが繰り返され、
それを政府が武力で鎮圧する、
というような状態でしたから、
https://www.afpbb.com/articles/-/3258307
・・・このイラン政府のウクライナ撃墜に対して
反発が広がることも必至だったわけです。

当然ながら、このイランの「ミス」を、
アメリカも批判
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54330540S0A110C2FF8000/

つまりイラン政府は今、
アメリカと国内世論との両面から、
圧力を受ける状況にあるわけです。

・・・

一方で、アメリカにおいても、
トランプは難しい局面に立たされています。

そもそもスレイマニ司令官の殺害は、
「司令官による4つの米大使館攻撃計画」
があったからだと、トランプ大統領は説明していますが、
エスパー米国防長官がこの度、その計画の存在を、
以下の様に否定したのです。

「決定的な情報は見ていない」。エスパー氏は12日のCBSテレビのインタビューで、トランプ氏が主張したイラン革命防衛隊精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官による4つの米大使館攻撃計画を否定した。』
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54338050T10C20A1FF8000/

既にこの点は、下記の記事でも指摘しましたが、
これは、相当に深刻な問題です。
https://38news.jp/politics/15193

かつてアメリカはイラク戦争を始める際、
「大量破壊兵器がある」という根拠で、
イラクを攻撃したわけですが、
後にそれが「ウソ」であることが発覚し、
大きな問題となりました。

スレイマニ司令官殺害は、
その不当な攻撃をほうふつとさせるのですが、
ウソの情報で殺害したり破壊するというのは、
単なる犯罪的な「テロル」に過ぎません。

こうした批判はイラクのみならず、
国際的にも、そして、国内的にも
拡大していくことでしょう。

・・・・

ところで、日本政府は、
こうした状況に至る直前に
自衛隊の派遣を閣議決定し、
既に一部の部隊が中東に出発しています。

その根拠として
“緊張が高まっている中東地域への
自衛隊派遣について「(心配は)していない」”

と、特にリスクはないと言う認識を
公式に表明しています。
https://www.asahi.com/articles/ASN167D7LN16UTFK01L.html

これについて、筆者は、
「自衛隊派遣には、最悪攻撃されるリスクがある」
と認識し、重ねてその趣旨を表明しています。
https://foomii.com/00178/2020011011000062547
https://38news.jp/politics/15193
https://www.youtube.com/watch?v=nDk_6j1VkEw

しかし、この表明について、
驚くほどたくさんの批判がありました。

いろいろな批判がありましたが、
その中心にあるのは、

「日本のタンカーを守らにゃいかんだろ!?
 丸腰でタンカーを行かせるのか!?
 リスク何か恐れるな!!」

というポイントの様でした。

一方で、国内のサヨク側は、
(どの程度の規模かは分かりませんが)
「自衛隊員をイラン戦争に行かせたくない」
「STOP WAR」

等のプラカードを掲げた反対デモを展開しています。
https://www.asahi.com/articles/ASN1D32VGN1DONFB003.html

そして、国民も基本的に派遣については
反対多数のようです(自衛隊中東派遣は58%反対)
https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020011201001683.html

・・・

この光景は、そのまま、
「戦後日本の安保における左右対立」
の構図をそのまま反映したものです。

現状のイラン問題の特殊事情はさておき、
ホシュは兎に角自衛隊を出せと言い、
サヨクは兎に角自衛隊を出すなと言っている
わけです。

例えば、当方が引用した記事が、どうやら
(ホシュには一定の人気のあるトランプに反対している)
ニューヨークタイムズ(NYT)であるということそれ自身が、
批判の対象になっているようです。

が、そのNYTの記事は、上記で紹介した
特に安保的にサヨク的ではない日経新聞と
同様の情報だったわけですから、
必ずしも「間違い」ではなかったわけで、
それにも拘わらず批判されたということは、
当方の意見が「サヨク」的に見えたために、
「ホシュ」的な方々から批判された、
という構図だった可能性が濃厚に考えられます。

言うまでもなく、実態は、
ただ単に自衛隊を出せばそれで防衛できるというものでもなく、
ただ単に自衛隊を送らなければ自衛官が死ななくて済む、
というモノでもありません。

場合によっては、自衛隊を出すことでかえって、
日本が(例えば、イランの非政府組織の)テロの標的にされ、
国民へのリスクが拡大することもあり得るのであり、

逆に、防衛オペレーションを取りやめることで、
かえってタンカー乗組員の生命が危機に晒されることも
あり得るわけです。

つまり、単なる単純な自衛隊賛成反対を繰り返すだけでは、
ホシュが主張するシーレーン防衛も国際貢献も、
サヨクが主張する国民の生命の安全の確保も、
難しくなるだけなのであり、
ホシュやサヨクの対立を超えた、
是々非々の態度が求められる
のです。

いずれにせよ、この問題の本質は、

「米・イラン双方に対して
自主独立国家として、
日本のエネルギー安全保障の確保を軸とした
日本の国益を第一とした外交が展開できるのか?」

という一点にあります。

その目的の下、今の状況を踏まえたうえで、
自衛隊の派遣の是非を考えねばならないわけです。

その際には、少なくとも・・・

1)イランの軍事力の水準の高さや
(例えば、Global Firepowerの「2019 Military Strength Ranking」では、
イラン14位に対してイラクは53位です)
https://www.globalfirepower.com/countries-listing.asp

2)イランの軍事勢力は、必ずしも政府軍だけでなく、
民間も含めて多様な階層があり、
「イラン政府が日本の自衛隊派遣を是認した」だけでは、
(官房長官が言うように)心配ない、とは言いきれない、

3)一旦戦争状態となれば、
ペルシャ湾以外の水域も安全とは言えなくなるのであり、
やはり、(官房長官が言うように)心配ない、とは言いきれない、

4)自衛隊の派遣を仮に実際に行うとするなら、
それに伴うリスクを最大限回避するために、
自衛隊のアメリカの軍事オペレーションとの無縁性を、
言葉と行動の二側面から徹底的に証明し続ける
必要がある。

5)タンカーの安全確保は
自衛隊のオペレーション以外の
様々な外交努力にも依存しているのであり、
その努力を徹底的に進める必要がある。

6)今後の情報は不透明ではあるものの、
ホルムズ海峡閉鎖等のエネルギーリスクがあることを想定し、
原発再稼働や有事対応を今のうちから検討しておく必要がある。

・・・

という点を加味しなければなりません。

そして何より大切なのは、
今までシーレーン防衛や、
自主防衛に向けた努力をほとんどしてこなかったくせに、
ちょっと危機が来たからといって慌てふためいて
自衛隊を派遣すりゃいい! と「だけ」言うのは、
無責任にも程がある、という点を認識することです。
https://foomii.com/00178/2020011011000062547

だから、今日本人がやるべきことは、
いたずらに狼狽えることではなく
冷静に状況を見据え、
直情的に行動することを避けつつ、
今出来得る最善を選択することを志しつつ、

これまで安全保障問題を蔑ろにしてきた
自らの不明を恥じ、反省し、
今後の安全保障確保に向けた努力を
決意する
他ないのです。

今回のイラン危機を契機とした、
安保についての世論での議論が、
(ほぼ絶望的な世論状況ではありますが・・・)
幾分なりとも適正化されることを、祈念しつつ、
本記事を配信したいと思います。

追伸1
本件についてさらにご関心の方は是非、こちらもご参照ください。
「イラン危機」から考える日本の途轍もない脆弱性:何も考えてこなかった馬鹿は、危機に飲み込まれて死ぬ他ない――その現実をまずは一旦、冷静に受け止めねばなりません。
https://foomii.com/00178/2020011011000062547

追伸2
そして、これからの外交、安保問題を考えていくためにも是非、クライテリオンの最新刊をご参照くだい。この特集はイラン危機が深刻化する直前に発行したものですが、まるで今の事態を予期していたような出版となりました。是非、ご覧ください。
https://www.amazon.co.jp/dp/B081WP9WMC/

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コメント

  1. ぬこ より:

    ISISトップのバグダディ(イスラエル工作員のサイモン・エリオット(笑))と、仲良く写っておったネオコンの米国マケイン上院議員。

    今回だって、米国とイランで、日本の知らない所で、手打ちがあるかも知れず。
    ババを引かせられるんでしょうかね?
    最も信頼できないのが米国、そしてそこに出資する英国やスイスなどの富豪。

    フェニキア末裔のゴーンと同じくセム系ユダヤ人に成り済ますカナン人。アシュケナージを手足に使いゴールドマンサックスやモルガンやシティバンク経由で日本から富を収奪。都市銀行や派遣会社の株主を見れば誰でも解るかと。

    またそれらの連中の経営する軍需産業。
    彼等隠れ共産主義者が戦前から日本に工作し、真の敵ソ連を守るため、日本が石油を依存する米国に攻撃をさせる愚行を扇動。
    勿論、ルーズベルト・チャーチル・スターリンでアジアの猿潰しで共闘してたらしいですけど。

    今回の自衛隊派遣で、こうした勢力から独立した観点で情報をどれだけ盗ってこれるかがポイントになるんでしょうかね?
    アメリカ様には東アジアで人民解放軍との消耗戦で血を流して貰わないといけないんだから。
    失われた20年で経済苦で死んだ人が不審死入れると年間十万人。要は二百万人。
    それと特別会計経由や思いやり予算経由で米国に貢いだ額。
    それらを総合的に勘案し、一人の米国兵士の単価で割って、命の対価を米国に要求すれば良いんじゃ無いでしょうかね?
    兵士何百万人になるんでしょうか?(笑)
    米中が世界から消えれば住みやすい地球になるでしょうね。

  2. 拓三 より:

    イランはトランプの公約である中東からの米軍撤退を優先しただけ。ここで武力衝突すれば米軍撤退がご破算になるので紳士的態度を被ってるだけの話。それと核開発に全力で取り組んでる事の証でしょう。

    私はサヨクの見解を聞くことがないのですが(聞いても無駄)ホシュ側の見解を聞いているとお前らいつから米国人? と笑ってしまいます。一番笑ったのは「金正恩がビビってる」… 一番ビビってるのは現場の米兵や。机上で妄想し笑いながら喋ってる面見てるとヘドが出る。それもスネ夫が。

    そもそも中東問題を宗教問題で論じている事。これは完全に欧米のプロパガンダ。欧米が宗教問題にすり替えたと言うよりも中東での宗教対立を煽り混乱させた張本人。その作られた問題をベースに中東を語る時点でその人の立ち位置がよくわかる。スンニ派シーア派の対立。各部族同士の対立。中東各国での国民と政権との対立。様々な対立が複雑に存在しますが対立相手の憎しみの下に欧米への憎しみがベースにあると言う事を忘れてはいけない。それを忘れた解決策など所詮薄っぺらな設計主義者の発想。

    自由民主主義の価値観 ? 第二次世界大戦後、欧米諸国が中東で犯した罪を誤魔化すための糞価値観に日本国旗を旗上る必要は無い!

  3. 重巡洋艦チクマ より:

    今回のイラク情勢の藤井先生の分析は極めて正鵠を得たもので全面的に賛同します。
    我が国の国内世論は左右双方共に絶望的な状況でありますが、適菜収さんの言葉を借りれば「それでもバカとは戦え」というところではないでしょうか。

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