【藤原昌樹】またもや「沖縄の自衛隊差別」を助長する在沖マスメディア ―なぜ、彼らは自衛隊を目の敵にするのか―

啓文社(編集用)

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「迷彩服着用」は大会に相応しくないことなのか-宮古島トライアスロン大会

 

 2025年4月20日、沖縄県宮古島で「第39回全日本トライアスロン宮古島大会」が開催されました。毎年4月に行われている同大会は、毎年12月の「NAHAマラソン」と並んで、日本全国のみならず海外からの選手も参加する、沖縄県で行われる一大スポーツイベントです(注1)

 このトライアスロン大会をめぐって、またもや「平和主義者」たちが珍説を主張する事態が発生しましたので、簡単にレポートしたいと思います。

 今年の「宮古島トライアスロン大会」の開催を目前に控え、『琉球新報』が4月13日付の記事で、昨年の第38回大会について「陸上自衛隊内部で支援計画書が作成されていたこと」が明らかとなり、同計画書において「宮古島トライアスロン大会」を「宮古島駐屯地の存在を市民に大々的にアピールできる格好の機会」と捉えて「地域住民の自衛隊に対する理解と信頼を獲得するとともに、安心感及び親近感を醸成すること」を目的とし、「迷彩服を着用しての支援」を重視していたことが判明したと報じました。

記事では、地元の市民団体から「組織ぐるみの自衛隊懐柔策だ」との批判の声や「ボランティア活動を通して自衛隊が住民生活に入り込んでいる」と危惧する声が上がっているとも報じています(注2)

宮古島トライアスロン、陸自「存在アピールできる格好の機会」 迷彩服も重視 隊内部文書で判明 2024年大会 – 琉球新報デジタル

 『琉球新報』は、同記事でチョウ類研究者の宮城秋乃氏が防衛省に対する情報開示請求によって入手した「(陸上自衛隊の)関連資料」の提供を受けたことを明らかにしています。

この宮城秋乃氏という人物は、法に抵触することも厭わず、米軍や自衛隊に対する抗議活動を執拗に続ける活動家として、沖縄では広く知られています(注3)

 『琉球新報』の取材に対して、陸自宮古島駐屯地は「公共性を有し、広報上の効果があると判断したことから、公務として支援を受託した」「住民の皆さまにより身近に感じてもらうために(迷彩服の)着用を決めた」と説明しています。迷彩服着用に関して抗議の声が上がっていることについては「自衛隊に対する理解と信頼を深めていただくよう、引き続き務める」と話し、同大会で迷彩服を着用するとしました(注4)

 「ミサイル基地いらない宮古島連絡会」は、4月15日に同大会の実行委員会事務局や、主催者の宮古島市や琉球新報社、陸自宮古島駐屯地などを訪れ、「陸自隊員が迷彩服ではなく大会ボランティアらに支給されるシャツを着用すること」などを要請しました(注4)

要請書では、これまで住民総出で大会成功のために協力してきたとして「(迷彩服を着用するなどして)住民に自衛隊員の存在を示し、宣伝するために支援名目で参加することは住民を騙し欺くことであり、大会の趣旨に反する」と指摘しています。

「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」による要請書

 また、4月16日には、宮古島市議会の野党会派市議7名が連名で「組織ぐるみで自分たちをアピールするために利用することは絶対に許されず、大会に寄せる気持ちが汚された」と批判し、同駐屯地が(大会への支援を)公務としていることに疑問を呈する「声明」を発表し、実行委員会が支給する公式Tシャツを着用するように求めました(注5)

さらに信じ難いことに、4月16日には「宮古島トライアスロン大会」の主催者の琉球新報社が、同じく主催者である宮古島市に対して、陸自宮古島駐屯地の比嘉隼人指令に迷彩服着用をやめるように求める「要請書」を送っています。

琉球新報社は「自衛隊の支援は宮古島市が依頼したため、普久原均社長名で嘉数登市長宛に要請書を送った」としており、「要請書」では、市民からの不安の声があることを指摘し、「戦争を想起させる迷彩服の着用は大会に相応しくなく、さらに市民感情からしても大会に対する反発につながる可能性がある」として、迷彩服の着用中止を求めています(注6)

 4月17日、宮古島市の担当者が宮古島駐屯地の比嘉隼人指令を訪ねて、「大会主催者の琉球新報社や宮古島市議会の野党市議団が4月20日に開催する第39回大会では迷彩服ではなく大会シャツを着るよう求めている」ことを伝えて考慮するように求めました。

 宮古島市との面談後、同駐屯地の担当者は『琉球新報』の取材に対して「迷彩服着用の方針は変わらない」と答えて、その理由については「広報上の観点から住民の皆さまに自衛隊をより身近に感じていただくため」と従来の回答を繰り返しました(注7)

 陸上自衛隊が「迷彩服着用の方針」を変更しないことを受けて、「ミサイル基地いらない宮古島連絡会」は4月18日、Facebookに宮古島駐屯地の電話番号を記載し、「これほど主催者も含めて迷彩服着用に反対の声が上がっているのに着用止めないと言っているようだ!」「抗議の電話を駐屯地へ!」と抗議の電話をかけるように呼び掛けています(注8)

ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会 NO MISSILE MIYAKOJIMA | Facebook

 「宮古島トライアスロン大会」の当日、当初の方針通り、宮古島駐屯地の隊員約150名が公務として迷彩服を着用して参加し、医療救護部や選手の荷物運搬、交通整理などさまざまな運営に携わりました。

それに対して、「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」はゴール会場の市陸上競技場前で横断幕を掲げ、公式Tシャツでボランティアに当たるように抗議していました(注9)

『琉球新報』『沖縄タイムス』は、陸自の「迷彩服着用」について、陸上競技場周辺で抗議して憤りをあらわにする声が上がる一方、理解を示す意見もあったと報じています。

 

新たなページを加えてしまった「沖縄の恥ずべき歴史」-沖縄における自衛隊差別

 陸上自衛隊が、「宮古島トライアスロン大会」の主催者である宮古島市の依頼に応えて支援するに際して、「宮古島駐屯地の存在を市民に大々的にアピールできる格好の機会」と捉えて「地域住民の自衛隊に対する理解と信頼を獲得するとともに、安心感及び親近感を醸成する」ことを支援の目的と位置づけていることは、至極当然のことであるように思えます。

 また、迷彩服を着用して参加することは「自らの存在をアピールする」との目的から考えて何ら不自然なことはなく、「大会への支援をボランティアではなく公務として位置づけていること」も、「必要十分な支援を行う」「事故など不測の事態が発生した場合に備える」ための適切な判断であると考えられます。

「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」をはじめとする「平和主義者」たちが、「宮古島トライアスロン大会」における陸自の「迷彩服着用」を非難していることは、まるでチンピラが何ら非のない一般市民に因縁をつけているかのようです。

「自らが正義である」と信じて「反戦平和」や「命どぅ宝」などといったスローガンを掲げている彼らが、自らの振る舞いの醜悪さに気づいていないが故に始末に負えず、ある意味ではより厄介かもしれません。

この度の自衛隊の振る舞いは、地域に根差そうと在地の祭りに寄付したり、積極的に参加したりしようとする企業や政治家と何か違いがあるのでしょうか。そうした企業や政治家も非難されるべきだと言うのでしょうか。要するに彼らは自衛隊を悪と決めつけている(差別以外の何物でもないでしょう)から騒いでいるのではないか、と疑わざるを得ません。

今回の騒動は、以前の記事(注10)で取り上げた、那覇市内の公立小学校で開催されるはずであった南西航空音楽隊のコンサートが「沖縄県教職員組合」の要請によって中止に追い込まれてしまった騒動や、かつての「自衛官成人式不招待問題」の事例などと同じく、「沖縄における自衛隊差別」であることは明らかです。

特に、「ミサイル基地いらない宮古島連絡会」がFacebookに宮古島駐屯地の電話番号を記載し、「抗議の電話を駐屯地へ!」と呼び掛けたことは「威力業務妨害罪」もしくは「公務執行妨害罪」に相当する犯罪行為であるとも考えられます(注11)

今回は「迷惑系」活動家の指摘を受けて新聞社が問題を報じ、他の活動団体や政治家が非難の声を上げて、それをまた新聞社が報じる(且つ要請にも動く)という、在沖「平和主義者」たちによるマッチポンプも甚だしい騒動でした。特に、本来であれば「社会の木鐸」たるべきはずが、ラウドマイノリティーに便乗して差別を助長してしまったマスメディアは責任を問われるべきでしょう。

「リベラル・チンピラ」(ジェイソン・モーガン氏)(注12)による自衛隊差別にはもうウンザリです。

 残念ながら、この度の「迷彩服着用」をめぐる騒動で、「沖縄の恥ずべき歴史」に新たなページを付け加えることになってしまいました。

 ウチナーンチュの一人として、沖縄で「平和主義者」たちによる「自衛隊に対する差別的言説」が蔓延り、「過激で違法な抗議活動」が野放図に繰り広げられてしまっていることが残念でならず、沖縄のマスメディアが、本来の意味での「社会の木鐸」としての役割を果たすようになることを願わずにはいられません。

 

(注1) 全日本トライアスロン宮古島大会公式

 (注2) 宮古島トライアスロン、陸自「存在アピールできる格好の機会」 迷彩服も重視 隊内部文書で判明 2024年大会 – 琉球新報デジタル

(注3) 宮城秋乃氏については、今年1月に陸上自衛隊第15旅団が大規模地震の発生を想定して実施した防災訓練の際に、数人の仲間とともに「ピクニック」と称して輸送ヘリコプターの着陸予定地点にレジャーシートを広げて着陸を断念させる妨害行為を行ったことが報じられています。

また、米軍北部訓練場ゲート前で車両の通行を妨害したり、2022年(令和4年)の沖縄県知事選に出馬した自民・公明推薦候補の街頭演説会で空包を投げつけて妨害したりしたとして公選法違反や道交法違反、威力業務妨害、公務執行妨害などの罪に問われました。2015年3月6日の那覇地裁での判決公判において、公務執行妨害罪については無罪となりましたが、その他の罪について懲役3年、執行猶予4年、罰金30万円(求刑懲役4年、罰金45万円)を言い渡されています。

同裁判の裁判長は、判決理由で「宮城被告が適法な抗議活動では目的が達成できないと考え、自身の信念を押し通すべく繰り返し犯罪行為に及んだ」と指摘し、「法秩序を全く意に介さない点は厳しい責任非難が妥当する」と指弾していました。それに対して、宮城被告は判決後、報道陣や支持者らを前に「私の有罪は皆さんの有罪だ」と述べて、「ここでひるんでしまったら後退してしまう、私は変わらず戦おうと思っている」と強調しています。

『琉球新報』『沖縄タイムス』両紙は、陸自の防災訓練の際に妨害行為があった事実については取り上げたものの、その詳細については報じておらず、「報道しない自由」を行使しているのではないかとの疑念を拭えません。

また、宮古島で行われた陸自の防災訓練について、市民団体が抗議したことを取り上げ、「『防災』の名目で実態は軍事訓練、戦時訓練である」として、自衛隊が参加する防災訓練そのものを非難する論調で報じています。

さらに両紙は、過激派と言っても過言ではない活動家である宮城氏が違法な抗議活動によって有罪判決を受けたことについても、識者談話や記者解説、社説などで「米軍が残した弾薬など危険物や廃棄物を除去し、豊かな自然を取り戻そうという訴えそのものが否定されたわけではない。国はその訴えに正面から向き合い、直視すべきだ」「宮城さんにとっては国や米軍などに抗議の意思を伝える上で効果的な表現だったのではないか。その点が考慮されず、『表現の自由性』が正面から認められなかったのは残念だ。判決を受けて『法律にのっとった行為』しか許さないというメッセージが市民に伝わり、抗議の声を上げることそのものが萎縮する懸念がある」と報じて、宮城氏による違法な抗議活動を正当化し、警察や司法が不当に弾圧しているかのようなメッセージを発信し続けています。

このような過激で違法な抗議活動や、それを擁護するかのような沖縄のマスメディアにおける歪んだ報道については、また別の機会により詳しく論じてみたいと考えています。

(注4) 迷彩服「広報の観点」 陸自の宮古島トライアスロン支援 20日の大会も着用へ – 琉球新報デジタル

(注5) トライアスロン 迷彩服参加反対 宮古島野党市議が声明  | 沖縄タイムス+プラス

(注6) 迷彩服中止 陸自に求めて 新報社、宮古島市に要請書 – 琉球新報デジタル

(注7) 迷彩服でなく大会シャツ着用「考慮を」 市が伝達、陸自の見解は 宮古島トライアスロン – 琉球新報デジタル

(注8) ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会 NO MISSILE MIYAKOJIMA | Facebook

(注9) 迷彩服着用に市民団体抗議 陸自ボランティア  | 沖縄タイムス+プラス

(注10) 【藤原昌樹】いま改めて「沖縄の恥ずべき歴史」を振り返るー沖縄における自衛隊差別 | 表現者クライテリオン

(注11) 威力業務妨害罪とは?偽計業務妨害罪との違い・構成要件・親告罪か否か・時効・罰則などを分かりやすく解説!

(注12) ジェイソン・モーガン「『ワシントン』の腐敗といかに戦うか?―グローバリズムからパーソナリズムへ」『表現者クライテリオン』2024年11月号・特集インタビュー(聞き手 川端祐一郎)

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