今回は、『表現者クライテリオン』で毎号掲載しているコラム【鳥兜】を公開します。
2021年9月号の1つ目のタイトルは「五輪開会式に見る日本の田舎者根性」。
昨日、2021/8/8に東京五輪の閉会式が行われましたね。本コラムでは開会式をテーマにしています。
『表現者クライテリオン』では、毎号の特集のほかに、様々な連載も掲載しています。
興味がありましたら、ぜひ本誌を手に取ってみてください。
以下内容です。
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東京五輪の開幕式を見て大いに失望すると同時に強い恥辱を感じた国民は多かろうと思う。
何よりもまず、菅総理が陛下のお言葉の「途中」で起立するという前代未聞の失態を演じた。しかもその様子が世界中に放送されてしまった。
こうした大失態が全世界に配信されてしまった以上、現存する世界唯一の「エンペラー」に対して、国民の代表たる総理大臣ですら敬意を表する能力を欠くくらいに日本人は無礼な人々なのだと、心ある世界の人々が認識することは避け難い。
同時に今上陛下は日本国民に十分な敬意を表されていない存在なのだと見なされてしまったとしても致し方ない。大いなる恥辱と共に、今上陛下に詫びても詫び尽くせぬ思いを抱く他ない。
さらに恥ずかしきことに、各種演出がまるでどこかの大学の学園祭の式典かと見紛うような水準の代物であった。
お茶の間に人気の芸人達による意味不明な寸劇、脈絡なき世界的に有名と言われる演者達によるダンスや楽器演奏、米企業の提案をそのままカネで買ったドローンによる見世物、そして著名外国人歌手が歌う洋楽「動画」の配信─まさに秩序なき羅列と言う他ない代物であり、日本の誇りどころか日本の「存在」そのものがほぼ消去されていたのであった。
かくして、もしも自身が海外の人間であったのなら、この開会式をしてかねてより薄々感じていた「日本の没落」がまさに鮮明となった情けなき代物なりと酷評する他ない、と直感する国民は少なくなかろうと思う。
ただしこの体たらくは、まさにその演出統括者が意図したものでもあった。
そもそもこの式典統括である博報堂出身の日置貴之氏は、式典コンセプトはDiversity and Inclusion(筆者訳:多様性と包摂)也と宣いつつ、その日本語訳を問われれば
「コンセプトの日本語は用意していない。世界に分かってもらいたいということで英語のみになった」
と答え、挙げ句に
「この時代に『国民は』とかいう表現は完全な時代遅れだ」
と平然と言ってのけるような人物なのであった。
実に恐るべき幼稚な独りよがりと言う他ない。
そもそも五輪開会式は金メダルを競い合う各国のスポーツの「戦士達」が入場してくる、「国民」という概念が最も鮮明化される世界的にも希有な舞台なのだ。
つまりそれは「Imagine there’s nocountries」が最も困難な舞台なのである。かくしてあの式典の参加者、関係者の中で「国民」という概念を失念していたのは日本の式典主催者だけだったのだ。
この欺瞞に満ちた滑稽極まりない状況こそ、我が国日本の縮図なのだ。
各国が国益を剝き出しにしたこの世界の中で、国益を忘れ日本らしさを隠蔽することこそが世界に参加する入場切符だという幼稚で浅薄な思い込みの下、
「日本はグローバルスタンダードだ」
なぞと嘯きながら欧米人に認めてもらわんが為に世界的に有名なジャズピアニストやタップダンサーを出演させ、僅かなりとも「仲間」に入れてもらいたいと願っているのである。
しかし、それを眺める世界の人々は、日本人のそんな振る舞いの中に媚びへつらいの匂いを感じ取りつつ、その了解不能で不気味な振る舞いをそこはかとない侮蔑の念をもって眺めるに過ぎないのだ。
まさに都会に憧れる田舎者の振る舞い─これこそこの開会式の本質なのであり、エリート・グローバリスト達に支配される我が国日本の実相なのである。
恥ずかしき事そして情けなき事この上なき話ではあるが、この恥辱から立ち直るには、苦痛を厭わずこの恥から目をそらさずそれを十全に味わい尽くすことからしか、その第一歩を始め得ぬのである。
(『表現者クライテリオン』2021年9月号より)
他の連載は『表現者クライテリオン』2021年9月号にて。
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コメント
2020東京オリンピック。日本人の活躍と、テロなど何事もなく終わったことは実の良かった。しかしながら、貴紙ご指摘の通り、開会式・閉会式の凡庸さにはあきれた。中でも
1 各ナレーションがフランス語?で始まり、英語になって、最後に日本
語とは、一体どこの国でオリンピックが行われているのだと全く不愉快
だった。
2 演出の内容も、外国受けを狙ったのか知らないが、日本らしさが全く
感じられず、何を言いたいのかのテーマ性も分からなかった。
以上、両者ともに外国受けを狙ったと思われる卑屈な態度には腹が立ち、双方とも途中で見る気がしなくなりTVを切った。
我々日本人にとってはありきたりな様でも、東北復興がテーマなら大人数で調和のとれた動きをする「青森ねぷた」や秋田の「竿灯」など、日本ならではの「和」や「団結」、伝統」を披露すべきだったと私は思っています。