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【藤井聡×なるせ監督】映画『君たちはまだ長いトンネルの中』公開記念対談<前編>

啓文社(編集用)

表現者クライテリオン編集部です。

先日6月17日、藤井聡編集長監修の映画「君たちはまだ長いトンネルの中」が公開されました。

なんと初日池袋はほぼ満席!

今後もより多くの方に同映画をお楽しみいただきたいと思います!

また既に映画をご覧になられた方へも、これからご覧になる予定の方へも、製作者の「君トン」に対する想いをお届けし一層お楽しみいただきたく、

藤井聡編集長となるせ監督の対談を公開いたします!

是非ご一読ください!

映画『君たちはまだ長いトンネルの中』公開記念

「思想×エンタメ」が政治を動かす消費税減税で日本を元気に!
なるせゆうせい×藤井 聡 対談トーク(前編)

藤井▼今日はありがとうございます、よろしくお願いします。
なるせ▼こちらこそ、よろしくお願いします。
藤井▼なるせさんは、これまでたくさんの映画、芝居を手がけてこられました映画監督で演出家の方なんですが、今回は大変有り難いことに、当方が監修した『マンガでわかる こんなに危ない!? 消費増税』を原作とした実写映画『君たちはまだ長いトンネルの中』を監督されたんです。本当にありがとうございました。
なるせ▼いえ、こちらこそ。
藤井▼この映画では、当方も経済監修、総合監修ということで、経済政策についてのセリフやシナリオについて監修させていただいたんですが、まずは監督にぜひ、映画を作られたきっかけ、背景についてお伺いしたいと思います。
なるせ▼きっかけは、オリエンタルラジオの中田敦彦さんのYouTube番組だったんです。その中で、藤井さんが監修された『マンガでわかる こんなに危ない!? 消費増税』を紹介する動画があって、消費増税がどれだけ日本に破壊的ダメージをもたらしているのかが分かりやすく解説されていたんです。それを見て「これは相当深刻なヤバイ話じゃないか…?」と思って「もっと調べてみよう」と思ったのがきっかけなんです。
藤井▼その漫画をご覧いただいて、「これはもう絶対広めていかんとあかん、こんなヤバイこと放置しておいたら日本潰れるで…」と、お感じいただいたのではないかと……。
なるせ▼そうです、まさに、そこが原点です!
藤井▼それで、映画化というところまで持って行くには大変なご努力があったんじゃないかと。資金集めも必要ですし、オーディションを通した役者さん集めも必要だし、何といっても、一般の方が楽しめるシナリオを作らなきゃいけない。そんなことを全部こなしながら一本の商業映画を作っていかれたわけですね。
なるせ▼はい、商業映画です。もう本当に、皆さんのお力のおかげです。
藤井▼映画はさっそく拝見しましたが、こういう言い方は全く失礼なのですがホントに普通に「面白い」(笑)。誰が観ても実に楽しめる映画なのに、それでいて「消費税あかんやん」というのが誰もが分かるという……あれ、普通の高校生や大学生が観てもよく分かる内容になってますよね。
なるせ▼そうですね。やっぱり、若い子たちに観てもらえるように作ったところはあります。
藤井▼もうこれは……僕の言論人生においても、画期的な出来事です(笑)。
なるせ▼そうなんですか!?(笑)。
藤井▼あの漫画を監修した経緯なんですが、もともと我々の『表現者クライテリオン』で、日本を救うには消費税反対運動が絶対必要だ、ということで『消費増税を凍結せよ』(二〇一八年十二月増刊号)という別冊を発刊したんですね。そしたらそれを読んだ「消費増税反対botちゃん」という名前の女子高生の漫画家さんがめっちゃ感動して漫画を描いてくれたんです。で、それを読んだオリラジのあっちゃんがコレは拡散しなきゃ、ってことでYouTubeにしてくれて、それが今度の映画につながった。いわば我々の本気の“念”が、女子高生のbotちゃん、中田あっちゃん、そして今回はなるせ監督に“数珠つなぎ”で次々と感染拡大していったわけです。で、ついにエンタメ映画になったんだなぁ、と思うと実に感慨深いなぁと感じてるんです。
なるせ▼いやぁ、本当に凄い力があります。

映画『君たちはまだ長いトンネルの中』誕生秘話

なるせ▼この作品が出来たのは、実はコロナの影響が大きいんですね。外出ができなくなり、舞台や映画などのエンタメ産業そのものがストップしてしまいました。僕の周りのフリーランスの皆も仕事がなくなって一緒に困り果てていたのですが、そこでめげずに、「じゃあ僕らが世の中に対してできることって何かないのか?」と考えたんですよね。そこでのしかかってきたのが政治、政策です。
 コロナに対する政策って国によって違いますよね。で、それを見てると結局、我々のエンタメも政治や政策の上でしか成り立っていないんだなっていうのが、今回のコロナでハッキリと分かったんです。もともと、政治なんてエンタメとは無縁だと思ってましたが、政府が「外出はしないでください」と一度決めたらエンタメの仕事が物凄い被害を受けることになった。
藤井▼普段は影響がなさそうな政治には、実はエンタメを根底から破壊できるほどの物凄い力があったんだと……。
なるせ▼そうです。「影響あるんだなぁ~」って(笑)。そこでちょっと僕らも政治のことを知っておかないとあかんなと。で、改めてあれこれ調べて辿り着いたのが、中田あっちゃんの動画でした。そんな流れの中で「ずっと日本がデフレの状態を抜け出せないのは何でだろ?」と思うようになったんですね。
藤井▼なるほど。
なるせ▼エンタメ産業って、ある程度生活にゆとりがないと成立しませんよね。舞台や映画を観に行くにしても、何千円という余裕がないと全くできません。なので、そもそもの国力がなければエンタメ産業もあっという間に衰退する。だから「みんなを元気にせなあかん」、「国力上げなきゃならん」っていう思いを込めて、「みんなを元気にできる、国力を上げる映画を作りたい!」と思ったわけです。
 で、そんな中で藤井先生の本や動画を見て、今まで自分が抱いていた経済や政治の常識というものは「もしかしたら違うかも……」と思うようにもなったんです。だから僕と同じように、そういうことを考えるきっかけとなるエンタメが作れないか、というふうにも思いましたね。
藤井▼世の中貧困化していて、エンタメにまでお金を出す余裕がなくなってきつつあるのは、半ばしょうがないと思って諦めている人も多いけど、実は政治的な判断一つでそんな貧困はいくらでも解消できる。例えば、消費税の減税をやれば貧困問題は瞬く間に改善していくんですが、あの漫画にはまさにそういう話が描かれていたわけですね。
なるせ▼そうです。そのことが本当にすっと体に入ってきました。世間では消費税って、「上げなきゃしょうがない」っていう風潮が濃厚で、少しずつ税率が上げられてしまい、それが当たり前になっている。でもそれってやっぱオカシイわけで、「アレ? おかしいぞ?」ってみんなにも考えてもらうきっかけを作れないものかと。ただ、それを押し付けがましくすると、若い人たちは……。
藤井▼見ないですよね(苦笑)。『表現者クライテリオン』にしても、テレビや動画しか見ない人はまず触れない。どうしても届かないというもどかしさは確かにあります。
なるせ▼壁がありますよね。
藤井▼漫画にしたらもっと届くかなとも思いましたが、それでもまだまだ届かない。でも今回のようにエンタメ映画になれば、さらにさらに広がりが出てくる。
なるせ▼そうですね。だから映画のタイトルも結構迷ったんですね。原題が「こんなに危ない!? 消費増税」ですが、「消費税」を前面に出して食わず嫌いされるよりも、まず観てもらわないと話にならないなと思いまして。
藤井▼あのタイトル……『君たちはまだ長いトンネルの中』(通称:君トン)は、まさに僕らが言いたかったことの“コア”です。「トンネルの中なんだから、歩きさえすれば、抜けることができるんだ。じっとしていたらずっとトンネルの中なんだよ」ということでね。なのでタイトル、素晴らしいと思いました。
なるせ▼いやもう、悩みに悩みました。
藤井▼で、映画拝見して思ったのは、先ほどの繰り返しになりますが、もう本当に、“普通の娯楽映画”として楽しめるんですよね(笑)。もし、僕らみたいな言論人が映画作ったら、真面目なドキュメンタリー映画、って感じになりそうな話を、ホントに上手く作られてますよね。
なるせ▼はい。スッと入って、いつの間にか考えさせられる、そんな構成にしています。
藤井▼経済なんて特に詳しくない一般の方に観てもらったら、「ビックリするぐらい分かりやすいなぁ」って言っていましたよ(笑)。
なるせ▼いやぁ、恐れ入ります。広めていきたいですね。

分かりやすい! 「安くて何が悪いの?」から始まる『君トン』

藤井▼今回の若いキャストの人たちも、十代に人気のある方たちなんですよね。
なるせ▼はい。SNSで発信力があったり、求心力もある子たちですね。オーディションも行ったんです。
藤井▼その中でもひときわ魅力的だったのが、主役のアサミちゃん(加藤小夏)、ですね。経済政策論を立て板に水で話し倒して、大人たち、政治家たちを次々に「論破」していくわけですが、あれ本当、よく噛まずにしゃべりますね(笑)。難しい政治経済的な話をサラサラと軽やかに話す感じが素晴らしい。上から目線で「あんたそんなことも分からないわけ?」っていう雰囲気で(笑)。
なるせ▼いいですよね。しかもそれでいて愛され要素も醸し出さないと、ただのお説教になってしまいますので、上手く演じてもらえたと思います。
藤井▼そうそう。あのかわいらしさと政策論の正確さと論破力にはホントに感心しましたよ。ちなみに関ジャニ∞の村上信五君にも映画観てもらったんですが、後で聞いた感想が「あの主人公の女の子、メッチャかわいらしい顔して、あれ、藤井先生ですやん! あのセリフ、いつも藤井先生が言うてはるのと同じですやん!?」って。セリフの中身は学者と同じだけど、キャラとしてメッチャかわいい、ってまさに素晴らしいキャスト、です(笑)。
なるせ▼原作ではもっとバトル要素といいますか、議論を重ねていく形式でしたが、実写のドラマにした時にはやっぱりそこは女子高生ですから、より現実的な、リアルなセリフに落とし込んだつもりです。彼女も、自分の言葉として消化していないと、説得力のあるセリフにはならないじゃないですか。
藤井▼加藤さんは、だいぶ勉強したんじゃないですか? ちゃんと意味を分かって喋ってる感じがしました。
なるせ▼そうですね。意味が分からず話していると棒読みっぽくなりますからね(笑)。やっぱり主役のアサミちゃんもそうですけど、議員役の方なども、セリフをきちんと消化していないと喋れないセリフが多いですから、それなりに勉強して臨んでくれています。そういう意味で俳優の皆さんも、今回初めて知ることって結構あるんだなと分かって、素直に勉強になったことは多々あります。
藤井▼今回僕も、経済政策的に間違いがないかどうか、セリフを監修させていただきましたが、最初の台本通りでほとんど直すところもなく、監督にはだいぶご理解いただけたんだなと、とても嬉しく感じました。
なるせ▼ありがとうございます。
藤井▼やはりちゃんと分かってないと、政策論的に正しいエンタメ映画シナリオ作成なんていうお仕事は難しいでしょうし(笑)。
なるせ▼本だけでなく、藤井先生の動画もめちゃめちゃ見ました(笑)。
藤井▼そうでしたか! すみません、お手数おかけして。
なるせ▼いや本当に、動いて喋る藤井先生は何より参考になりました(笑)。役者もそうですが、脚本を書く時も自分の中で消化していないと、生きた言葉として出てこないですから。僕もそれなりに自分の中に落とし込む作業というのはありましたね。
藤井▼なるほど。それは凄い「変換力」ですね。政策論からエンタメシナリオに変換するなんて普通なかなかできないですよね。観ている人は、主人公のアサミちゃんが理解したことを、そのまま理解できるようになっていますから、伝わっていく感じがありますよね。
なるせ▼なかでも特に、安倍君という役があるのですが、「それってどういうこと?」という、視聴者により近い目線のセリフを言うんですね。デフレの話の時も、「安い」というイメージって「安くて嬉しい、安いことが何でダメなの?」と一般の人たちは思ってると思うのですが……。
藤井▼一番最初のシーンも「安くて何が悪いの?」っていう話で、そこから物語が始まっていきましたね。
なるせ▼はい。でもそれはあくまで消費者の立場であって、逆に「お店側の立場、ものを作る立場から見たらどうなの?」という目線に、普通の日常の会話の中で気が付いていくんですね。そういう意味でも、映像で観せることで、分かりやすくなる、っていう意味があるんじゃないか、って思います。

出演者全員が「反緊縮論」の思想を理解した上で出来上がった『君トン』

藤井▼ところで今回の映画作りで、いつもと違った特徴的なことってありましたか?
なるせ▼今回は撮影現場に入る前に、ホントに多くのディスカッションをやりましたね。俳優さんたちと経済の話もしっかりして、理解を深めてから撮影に臨みました。普段そんなことはしたことなかったですね。そもそも、この作品のテーマ自体に賛同いただかない人には、関わってほしくないなとも思っていましたし。無理矢理自分の考えを変えてまで演じてもらうのも、何か違うだろう、と。
藤井▼なるほど、なるほど。
なるせ▼いざ映画を告知する時に、一緒に盛り上げていきたいじゃないですか。なので、オーディションの時から、このテーマにご協力いただけるかどうか、というのは大事な要素でした。
藤井▼そういう意味でも、作品全体に一貫した思想性というものが出てくるということですね。
なるせ▼深まりますし、一体感も出ますね。こういった、作品のテーマを理解するためのディスカッションを重ねるやり方って、珍しいと思いますし、面白く有意義だったので、今後も取り入れていきたいですね。
藤井▼一人ひとりが「反緊縮思想」をそれぞれに理解し、納得し、しかも「伝えたい」っていう気持ちを持っておられて、その上で、「私たちが不幸なのは、政府の緊縮財政があるからじゃん! 消費増税があるからじゃん! それさえ変えれば、この長くて暗いトンネルから抜け出せるじゃん!!」っていう、希望と怒りが混じった感情が観てる方にも伝わるわけですね。
なるせ▼主人公のアサミ役の加藤小夏さんとも、結構話しました。登場人物の中では知識を持っている側の役柄なのですが、「嫌な奴」にだけはならないでくれと。
藤井▼なるほど、それは大切なポイントですね。現実にはそういうの、いますからね(苦笑)。
なるせ▼「こいつ嫌や!」と思われると、誰も話聞かなくなりますからね(笑)。だから、皆に愛されるキャラになるよう、そういう要素をいっぱい作れるように、話し合いながら一緒に作り込んでいきました。
藤井▼そう考えると加藤小夏ちゃんの抜擢は大成功ですね! ホントに理知的で可愛くて魅力的な若手女優さんで、彼女が演ずる高橋あさみちゃんならこれからますます皆に愛されながら、大活躍をやってもらえそうですね。凄く楽しみです。

映画の力×思想の力

井▼ところで今回の映画のテーマは「反緊縮」ですが、僕がそれを主張しているのは、それが「日本復活」、「国力増進」のために必須だからです。で、なんで国力増進が必要なのかというと、「我が国が米中をはじめとした強国に隷属化する状況から逃れ、自主独立しなければならないから」です。つまり、保守思想の中で最も大切な一身の独立と一国の独立のために絶対必要な超重要作戦が「消費税の減税」なんですね。こういう言論を、もう二十年以上にわたって活字を中心に展開してきたわけですが、今日の活字離れもあり、本や雑誌の力も弱まってきているのが現実です。
 そんな中で僕がずっと必要だと思ってきたのが「映画」の力だったんです。映画には凄い力がある。これは、最近の認知科学や心理学が明らかにしている通り、人々の心を大きく動かすには「物語」が絶対必要だからです。「論理」だけでは、結局は人間の心や体は動かない、だから政治も動かない。人の心や体、そして政治が動くには、論理だけじゃなくて、ナラティブ(物語)が絶対必要なんです。例えば三島由紀夫も小説という形式を巧みに使って、彼なりの政治を徹底的に展開した。ですが、「小説の力」は、今は確実に弱まっていますよね。
なるせ▼全くおっしゃる通りです。
藤井▼だとしたら、人々の心と体、そして究極的に政治を動かすには、「映画」の力が絶対に必要なんじゃないかと。だから、これまであれやこれやと考えてきた中で、僕の中にあった言論界における最大の課題の一つが、「思想と映画のコラボレーション」だったんです。
なるせ▼なるほど、そうだったんですか。
藤井▼僕個人はここ十年、二十年の間に物語の力について学術的に関心を持ち、物語にまつわる学術的な研究を重ね、論文もたくさん書いてきたんですが、肝心のナラティブ=物語を自分で「作る」っていう仕事は全くやってこなかった。だから、誰かに「物語を作ってもらわないと…」と思っていた中で、突然なるせ監督が現れたわけです。
なるせ▼本当ですか(笑)。
藤井▼だから今回の映画のお話はもう、当方にしてみれば、メチャクチャに有り難い話だったわけです。
なるせ▼今回の映画を通して少しでも考えるきっかけになってくれたら、役に立ってくれたらと思うと、映画作って良かったなと心から思います。請負で依頼されてやる仕事もあるんですけど、今回は企画から、ゼロから自分で作り上げた作品ですので、喜びもひとしおです。政治色が入った作品となると、大手の映画関連会社から敬遠されたりもしますけど、今回は草の根運動といいますか、クラウドファンディングも活用して、少しずつ広めていきたいなと思っています。

映画監督なるせゆうせいの正体──西部邁との出会い

藤井▼なるせ監督はこれまで、政治的なテーマを取り上げたことはあるんですか?
なるせ▼舞台作品では、介護問題を扱ったり、食育の話など、多少社会的な問題も取り上げたことはありますが、今回の消費税問題のように、タイムリーに時代にドンピシャでハマるテーマ、つまり「今撮っとかないといけない」という衝動を覚えたのは、初めてのことですね。
藤井▼これまでは主にどういったテーマが多かったのですか。
なるせ▼僕はディズニー作品なども好きなので、もう本当に“ザ・エンタメ”感満載で、笑って泣けて明るく楽しく! といったものが多かったですね。近年は、そこに少し社会問題も取り入れて……ということにチャレンジしたりもしていました。宮崎駿さんのアニメ作品は、そういったやり方が上手だなと思い参考にしています。『風の谷のナウシカ』なども、環境問題が背景に入っていますよね。そういった影響力のある作品を、今後も作っていきたいとは思っています。
藤井▼なるせ監督は早稲田大学の学生の頃から演劇をやられていたんですよね。
なるせ▼そうですね。もともと大学に入った頃は教師になろうと思っていたんですが、教員の免許を取るための単位が膨大で全然取る気になれなくて(笑)、そんな時に学生演劇を見る機会がありまして。
藤井▼学内にある劇団ですか?
なるせ▼そうです。早稲田関連で二千団体ぐらいあるんですよ(笑)。
藤井▼えっ! そんなに!?
なるせ▼当時、同じ世代に堺雅人さんなどが所属する人気劇団などもあって、僕も最初はやりたいことがあんまりない人間だったんですけど、舞台を観た時に「ここには宇宙がある」って感じたんですね。照明や音響や脚本や役者や、様々な役割が銀河系の惑星のようにそこにはあったので、自分にも何かしら出来ることがあるんじゃないか……と思ったんです。
藤井▼劇団に入られたんですか?
なるせ▼入ろうとも思ったのですが、人気劇団は何やら凄いハードな自衛隊みたいな訓練をさせられるって聞いて、それはちょっと無理と思い(笑)、それならということで、自分で脚本を書いて自分で劇団を作ったんです。
藤井▼いわば二千分の一を作ったと。
なるせ▼そうです。ただ台本の書き方も何も知らなかったので、当時は三百六十五日演劇を観まくって、何が面白くて何がダメなのかと全部分析しました。何かを分析したり調べたりすることは昔から好きだったので、その後はなんとか書き始めていくことができました。
藤井▼でも先日お聞きしてびっくりしたんですが、その頃、西部邁先生とメシを食いに行ったりもされてたんですよね?
なるせ▼そうなんですよ! それはもう運命的でして(笑)。
藤井▼ホント驚きました(笑)、ある種の巡り合わせみたいなものを感じますよね。
なるせ▼西部先生がちょうど『朝生』にもよく出ていらした頃、ある日僕が高田馬場から歩いていて、西部先生が早稲田の方から歩いて来られて。テレビに出ていて知っていたので、思わず声をかけてしまったんですよね。「西部先生ですか?」って言ったら「そうやで」って……。
藤井▼道端で、ですね(笑)。
なるせ▼はい、道端で(笑)。で、いろいろ話してたら、先生の方から「もしよかったら、メシでも食いに行くか」って言ってもらって。
藤井▼えーー! そんな話だったんですね!? なんと、それは凄い……でもまぁ西部先生らしいっちゃぁ西部先生らしい話ですねぇ。
なるせ▼今時だとちょっと怖い話ですし、僕もそんなに積極的に話しかけるタイプでもないんですけど、その時はなぜか話しかけてしまって……。「ティーヌーン」っていう普通の学生が行くタイ料理屋で一緒に食べたこと、今でも覚えていますね。何話したか全然覚えていないんですけど、ただめちゃめちゃ明るい方だなぁという印象だけが残ってます。
藤井▼ちょうどご機嫌だったんですね(笑)。当時のなるせ青年は西部先生のどういうところがお好きだったんですか?
なるせ▼『朝生』に出ているのを見ていて、内容そのものはほとんど覚えてないのですが、ただなんかおっしゃっていることが、本当にしっくりくるなぁと、腑に落ちたといいますか……。
藤井▼なるほど、僕もほとんど同じように感じてましたね。当時、テレビや雑誌や学校の先生も、通り一遍のことしか言わない嘘つきのクズみたいな大人ばかりだって思ってましたけど、TVに出てる西部邁って人だけはちゃんとしたことを話してましたね。それこそ「しっくりくる」という感覚で。
なるせ▼そうです! 「なんか、しっくりくるなぁ」という感じ。
藤井▼テレビってそういう意味でやっぱり凄いですね。僕らもある意味、仲間ですよ、仲間(笑)。
なるせ▼これぞ運命と言えますね。
藤井▼偶然というか、必然というか。
なるせ▼西部先生のお導きに感謝です(笑)。

(後編へ続く)

 

 

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