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【書評】経済学を超えた議論へ――橋本 悠

啓文社(編集用)

皆様こんにちは。
本日は現在発売中の『表現者クライテリオン』2022年9月号より書評をお届けします。

 

経済学を超えた議論へ

橋本 悠

 

島倉 原 著
『MMT講義ノート
貨幣の起源、主権国家の原点とは何か』
白水社/2022年6月刊

 

 本書は「MMT現代貨幣理論入門」、いわゆる金ピカ本の翻訳を手掛けた島倉原氏が、自身が教鞭を取った早稲田大学での公開講座の内容に増補を加えて、MMTの諸論点を詳細に掘り下げた内容となっている。MMTの要点や緊縮財政の問題点に関する記述が説得的なのはもとより、目を引くのはMMTの貨幣論や税制・財政政策についての詳細な分析、そしてMMTに内生的景気循環論を組み込んだ具体的な政策の提案である。

 特に必読に思えたのは第二章で展開された貨幣論に関する詳述である。納税義務という債務を支払うために人々が貨幣を手にするという「租税貨幣論」は、「誰もが法定不換通貨の価値を認めるのは、他人もその価値を認めているからである」という商品貨幣論と共通の説明に、最終的な受け取り手としての政府の存在という前提を付加することで成り立っていると踏み込み、外貨が流通する途上国の事情が「政府の強制ではなく受け取りが重要である」というクナップの議論を用いることで説明できるとして、「租税貨幣論」の理解を補強する。

また、納税義務自体に対する左派系学者からの批判については、納税義務を正当化する理論としてフランスのレギュラシオン学派が提唱した「本源的債務論」を、贈与経済の供物についての研究を参考にして、雄牛の肉や穀物などの供物を奉納することで解消される程度の軽いものであったと導き、批判に応えている。

 

 また、政府が先に人々を保護し、供物や税によってその債務を返済するという構図の前近代の神権政治から、先に人々から納税を受けた政府が、公共サービスを提供することでその債務を履行するという構図の近現代の世俗的政治への転換を説明できないという批判については、債務を意味する”credit”の語源を掘り下げることにより、供物には元来から神に対する貸しを作って見返しを引き出すための贈与手段でもあったという解釈を提示することで説明しており、「公益的債権貨幣論」とこの解釈を名付けている。

 「租税貨幣論」に関する以上の論点について考えた時、MMTは経済学の域を大きく超えた議論に辿り着く。W・モズラーの名刺の寓話は租税貨幣論の極めて容易な説明として用いられるが、子どもが親の権威に従うという厳然たる前提が存在し、「権力」が貨幣を流通させるには不可欠であるという側面は、M・ハドソンが「超帝国主義国家アメリカの内幕」で明らかにしているように、ドル覇権の成立にも欠かせない要素である。

また、納税分以上の貨幣を人々が手にする事実をMMTは説明することができず、マルクスのフェティッシュ論の洞察の深さを再確認させられる。島倉氏の公益的債権貨幣論はこれらを説明する一つの仮説になるかもしれず、経済学を超えた社会科学全域にわたる射程の議論へと繋げる書となるであろう。本書の刊行を機に、歴史学や人類学、思想史の観点からもMMTの議論が盛り上がることを期待したい。

 

 

『表現者クライテリオン』2022年9月号 『岸田文雄は、安倍晋三の思いを引き継げるのか?』
https://the-criterion.jp/backnumber/104_202209/

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