(『表現者クライテリオン2023年5月号 【特集】「岸田文雄」はニッポンジンの象徴である”依存症”のなれの果て』特集対談より一部公開)
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「岸田文雄現象」をどう解釈すべきか
藤井▼今号の特集は「『岸田文雄』はニッポンジンの象徴である──“依存症”のなれの果て」というものですが、たとえば安倍さんや小泉さんに対する批判は、伝統的な社会哲学なり政治学で論ずることができます。しかし、「岸田文雄現象」だけは、既存の政治学の議論ではほとんど歯が立たないような新種の病理のように思います。まず、岸田さんには、政治的な意図というものがまるで見えない。
政治的なビジョンをさして持たないと言われる菅さんからですら、あれやこれを潰してやりたい、という半グレ的な怨念、情念を感じますが、岸田さんからはそれすら何も感じられない。ただただ「誰からも批判されない」という行為だけを拾い集めた結果、ただそれだけのことで総理にまで登りつめ、人気取りや保身以外は何一つしないにもかかわらず、一定程度以上の国民に支持され、誰も倒せない状況が継続している。
結果、当然のようにして日本がアメリカだとか財務省だとかの権力機構にいいようにされるに至っている。要するに完全なる無意志かつ無能者が、さして批判されることもなく最高政治権力の座に居座り続け、その結果、国家が加速度的に滅びつつあるわけです。これは今までにないタイプ、新しい次元の政治社会的病理の出現と言えると思います。
佐高▼私は加藤紘一と同郷でつながりがあり、義理があってある会に行ったら岸田が挨拶していました。その時「これほど迫力のない人間がいるのか」と思いました。聞くに堪えない挨拶というか、胸を打つ言葉が何もないんです。この人は世襲でなければ当選しなかっただろうなと感じました。
溝手顕正という岸田の代貸みたいな人が、参議院選挙の広島選挙区で河井案里に落とされましたよね。安倍が溝手憎しで河井案里を立てたと言われていますが、派閥の長なら意地でも河井の選挙カーには乗らないはずです。でも乗るんですよね。これはヤクザの仁義にも反します。要するに子分も守れない親分なんですよ。
藤井▼「恥知らず」という概念自体がないということですね。
佐高▼何が恥かが分からないわけですよね。派閥の長とか肩書が欲しいだけで、自分に人望がないから肩書から離れられないのでしょうね。
藤井▼岸田さんは市井の民として生きていたら決して悪い人ではないと思うのですが、総理大臣という国家を導いていく責任がある人間としては、なすべき事をしないということを通して巨大被害を日本に与え続けています。こういう被害は学術的には「機会費用」と言われますが、その機会費用のあまりの巨大さに対して我々は、正義や公正の観点からの義憤を持って批判せねばなりません。
ただし、彼が総理の座にいることができるのは、周りが押し上げてくれているから、というのが最大の原因です。宏池会が岸田さんを派閥リーダーに押し上げ、自民党がその宏池会リーダーを総裁に選定し、日本国民がその自民党を最大与党として選定している。その結果誕生したのが、岸田総理なわけです。だから結局、岸田総理による国家的破壊は、岸田さんの罪でもあると同時に、自民党の罪であり日本国民の罪なのだと思います。
佐高▼ある朝日新聞の記者が岸田に取材した時に、その記者が早稲田の法学部を出ていて、岸田も二浪して早稲田の法学部だから、最初の挨拶で「私も早稲田の法学部です」と言ったら、「私は開成だ」と言われたそうです(笑)。
藤井▼……心底恥ずかしい話ですね……。
佐高▼開成で止まっているわけです。これが首相なんですよ。
藤井▼そういう意味では、現代日本のダメな部分をすべて集めて純化して産み出されたようなご存在ですね……。
アメリカの原爆投下に何も言えない岸田首相
佐高▼日刊スポーツに「政界地獄耳」というコラムがあって、バイデンに肩を叩かれた岸田の話がありましたよね。
藤井▼ありましたね。肩というか首根っこ摑まれて、それに対してまるで犬のように喜んで満面の笑みを浮かべて喜んでいるやつですね。
佐高▼あれを見て殴ってやろうかと思いました。ロシアが今、核を使う、使わないと言っていますが、岸田はバイデンに「原爆を落としたことを謝ってください」くらい言わないと。
藤井▼おっしゃる通りです。日米共同声明では、「核兵器の使用はいかなる理由があろうとも絶対に正当化できない。人類に対する敵対行為だ」とロシアを批判していたわけですが、そんなことする前にまずはアメリカに対して「お前がやったのは人類の敵対行為であり、いかなる理由があっても絶対正当化できない」と言わねば筋が通らない。
ロシアのメドベージェフに「腹を切れ。広島と長崎の方に失礼だろ」と言われてましたが、まさにおっしゃる通りとしか言いようがない。腹を切れと言われてぐうの音も出ないような人物が我が国のリーダーだなんて、もう恥ずかしくて恥ずかしくて仕様がないです……。
佐高▼原爆を落としたアメリカを警戒しなくていいのかと。敵基地攻撃能力というけれど、アメリカは国連の敵国条項から日本を外していないわけでしょう。ということは、敵基地攻撃能力とはアメリカを攻撃する能力ということじゃないですか(笑)。そのくらいのことが分からないのかと思います。原爆を落とされたことを首相が忘れたらいかんだろうと。
藤井▼本当にそうです。しかも岸田さんは広島の選挙区じゃないですか! 「広島の無辜の民を大量虐殺したアメリカは絶対に正当化できません!」くらいバイデンに言うべきお立場です。にもかかわらず、そんなこと一言も言わずにそのアメリカと一緒に「ロシアの核兵器使用は人類に対する敵対行為だ、絶対正当化できない!」といけしゃあしゃあと共同宣言するなんてもう、腰巾着以下だと言われても仕方ない。
佐高▼原爆を落とした爆撃機「エノラ・ゲイ」のパイロットはアメリカに帰って英雄扱いされますが、後に広島に来て自分が何をやったのかを見て、ものすごく苦しむわけです。でも、広島を選挙区とする人間が何も苦しんでいないのかと。
藤井▼論理的に言うと、「いかなる核攻撃も正当化できない」と第三者に言っておきながら加害者の米大統領にだけはそれを言わないということは、「広島、長崎の人間への核攻撃は正当化可能だ」と言っているに等しい。
日本人としてそんな態度が許容されるはずがない。しかも今回のサミットでは、バイデンを長崎にも連れて行くことも検討しているらしい。不埒にも程がある。
佐高▼広島、長崎の人が拒否すればいいんですよ。共同声明で恥をさらした首相は来るなとデモをやりたいくらいですね。
藤井▼そういう心情はもはや、右翼、左翼ではなく、日本人として当然の感情です。彼の振る舞いは広島、長崎の方に対して失礼に過ぎます。
佐高▼それが分からないのは、開成に入るための受験勉強に入っていなかったからでしょうね(笑)。
藤井▼もう頭が痛いですね(苦笑)。
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『表現者クライテリオン2023年5月号 【特集】「岸田文雄」はニッポンジンの象徴である ”依存症”のなれの果て』特集対談より
本誌では、立場を超えてよく仕事を一緒にすることがあった「西部邁」との関係性にも話が及んでいます。
岸田首相の徹底批判を通じて、我が国の人民の”依存症”を見つめた本特集。是非、本誌をお手にお取りください!
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