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【柴山桂太】平成の終わりとともに…

From 柴山桂太(京都大学大学院准教授) 

今年は改元が予定される年ということもあり、昨年末からテレビなどで平成を振り返る番組を多く見かけるようになりました。

それらを眺めて気づいたことがあります。平成は一〇年おきに経済の大変調を来してきたということです。

平成元年(1989)は日本経済のバブルが最高潮に達した年でした。年末には日経平均が3万8915円を記録しますが、翌年から相場の崩壊が始まります。

平成一〇年(1998)は、前年のアジア通貨危機や拓銀、山一倒産のあおりを受けて、日本経済が本格的なデフレに突入した年です。バブル崩壊は、その直後ではなく「次の景気後退」の方が深刻な影響をもたらすという歴史的なパターンが、日本でも繰り返されました。

平成二〇年(2008)は、リーマンショックの年。翌年にはギリシャで財政の不正会計が明るみに出て欧州債務危機が始まります。相次ぐ金融危機で、世界経済が大崩壊の一歩手前まで追い込まれたのはいまだ記憶に新しいところ。

このように振り返って見ると、平成期の日本経済は、年を経るごとに世界経済と同期しはじめていることが分かります。平成元年のバブル経済、平成一〇年のデフレ不況はまだ国内要因で説明できますが、平成二〇年のリーマンショックは海外要因を見ないと説明できません。

平成の三〇年間で日本経済のグローバル化が進み、世界経済へと深く組み込まれていった。その結果、世界経済に変調が起きるとその影響をもろに受けるようになったのです。

さて、今年は平成から新しい元号に変わる年。折しも、アメリカの景気拡大は終局にさしかかり、中国経済は減速、欧州ではブレグジットを控えて世界経済の先行きは急激に不透明感を増している。新元号も、経済の大変調とともに幕を空けそうな気配です。

注目すべきはやはりアメリカの動向です。トランプ政権は今年から任期の後半(「シーズン2」)に入りますが、これまで以上に自国優位の方針を打ち出すと思われます。

冷戦終結後のアメリカは、世界経済の発展と自国の発展を同一線上に考えていました。世界経済の発展はアメリカの発展に繋がり、逆もまた真であるという考え方です。ところが、トランプはこの考え方は虚偽だと主張して大統領になった人物です。世界経済は発展しているのにアメリカは衰退した。アメリカを再び偉大にするためには世界経済が犠牲を払っても構わない。そのような考え方をする指導者です。

今後、世界的な景気後退が始まると何が起こるのか。おそらくトランプは、それを他人(他国)のせいにするでしょう。自国経済の救済を優先しつつ、外国経済との間の隔壁を大きくする。具体的に言えば移民制限を強化し、必要なら更なる関税引き上げも視野に入れる。そのようにして、沈みつつある世界経済で、アメリカ経済だけは浮かび上がらせようとする−−−−どこまで実現可能かどうかはともかく、そう行動しようとするものと思われます。

もう一つ、トランプには経済と安全保障を直接結びつけて考える傾向が顕著に見られます。今の中国に対する態度を見れば明らかで、景気が悪くなれば、その態度をさらに強く打ち出すことになるでしょう。今は下手に出てトランプ関税の撤廃を働きかけている中国も、アメリカの方針が変わらないとなれば、やはり態度を硬化させることになるはずです。

平成の三〇年間は、冷戦体制の崩壊と経済のグローバル化で世界経済がかつてなく一体化を強めた時代でした。しかし、次の時代はどうか。国家間の求心力が強まる時代の後には、遠心力が働く時代がやってくる…などと言えば単純に過ぎるかもしれません。しかし、大きくはそう考えておいた方が良いのではないか。

確実に言えるのは、次の三〇年は、過去の三〇年とは違った時代になるということ。そして歴史は、ひとたび方向が変わると、そちらに向かって急激に動き始めるということです。

元号とは不思議な制度で、一つの元号は一つの時代のまとまりを意識させます。平成が終わり、新しい元号が始まる。それとともに、国民の意識にも切れ目が生じることになるでしょう。世界認識もまた、変更されることになるでしょう。というより、変更されなければならない。われわれにそれを強いる歴史の圧力は、今年、いやが上にも高まることになるはずです。

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