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【藤井聡×堤未果】 第二回 藤井 聡×堤未果「農」を語る(3)

啓文社(編集用)

啓文社(編集用)

こんにちは。
『表現者クライテリオン』編集部です。

 

前回に引き続き、『表現者クライテリオン』2023年1月号に掲載された連載記事『第二回 藤井 聡×堤未果「農」を語る』をお届けします。

 

『第一回 藤井 聡×堤未果「農」を語る』は下記よりお読みいただけます。
『表現者クライテリオン』2022年11月号

 

前回配信はこちらから↓
『第二回 藤井 聡×堤未果「農」を語る(1)』

『第二回 藤井 聡×堤未果「農」を語る(2)』

 

「農」を語る

農は国の本なり。
その姿を立体的に示すことを通じて保守思想を語る。

堤未果×藤井聡
第2回 地方の「農」は日本の最後の砦

 

神社を語ることは農を語ることである

▼ええ、環境は大きいですね。国土の七割が森である日本という国は、そういう意味でも本当に特別だと思います。先日札幌で「食と農」の講演をする機会があったんですが、その時にお伝えしたんです。

今、地球の土壌や生態系の循環がこれだけボロボロになって、環境も危ない、食も危ない、と世界が危機的状態にいる中、日本は計り知れない資産を持っているんですよ、と。道民の方々が一二〇〇人くらい来ていたんですが、その時かなり多くのお客様が一度に大きくうなずいていらっしゃったのが印象的でした。

 

 北海道は外国人の土地購入がすごいでしょう、特に今円安で加速していて、皆さん大きな危機感があるんです。森林の持つ価値は「経済性」だけでは測れません。知られていないだけで、今後日本の農も食も環境も経済も救済する潜在的な力が山ほどある、私は今回の本の取材をしながら、本当に驚かされっぱなしでした。

 

藤井▼森林は人間存在にとってとてつもなく大切なものだと思います。例えば僕が住む場所を考える時に唯一こだわるのは森が近くにあることです。あくまで庶民的イメージでお話ししますが、森にはいわゆる神が宿っていてて、そういう神々の空気に触れていないと、人間というのは絶対病んでしまう、っていうふうな感覚があるんですね。

もちろん大都会のタワーマンションの中でも、自然の取り込み方とかはあるのだとは思いますけど、やっぱり選べるんだったら森がそばにあった方が絶対いい、そんなふうに感じてますね。

 

▼素敵ですね、森の近くの住まい。分かります。私も京都に引っ越したのは……。

 

藤井▼え、京都に?

 

▼ふふふ、実はそうなんですよ。二〇一二年に引っ越して、最近また市内で引っ越したんです。それでね、うちもやっぱり森の近くにしました。この、日常の中で自然を通して神を感じるという感性が、私たち日本人にはありますよね。

 

藤井▼それがないと本能的に気持ち悪い。なんだか少しずつ気がおかしくなっていく感じがするんです。だからその発想でいくと、都会の人っていうのはよほど気をつけないと気がおかしくなってしまってはるんやろうなと(笑)。

 

▼ああ、藤井先生はもう一周回ってきた感じですか(笑)。取材した土壌学者の先生曰く、都会でもベランダで食べ物を育てるだけで違うそうですよ。土と、命の循環を日常に入れるだけで。でも東京から引っ越してきて改めて感動しましたが、京都の最大の魅力の一つは、神社がとても多いことですね。

 

藤井▼神社もいいですね。もちろん人間が作ったものですが、自然をふんだんに抱え込んだ存在ですよね。いってみれば神社に祭られている神の本質っていうのは、むしろ自然そのものっていうふうにも感じますよね。自然に対する畏怖の念の象徴としての神、そんな気持ちが信仰心、とも言えるんでしょうね。

 

▼ええ、最近、本当にそれを感じるんです。日本人っておそらく皆さんそうなんでしょうけど、こう、ただ手を合わせるじゃないですか。朝は太陽にも手を合わせるし、お天道様が見てるから悪いことできないよ、と(笑)。

ご飯を食べる前にも手を合わせますね、アメリカから帰国した時、「いただきます」、と言う言葉の美しさを初めて実感しました。私、最近、自分調子に乗ってるかな、謙虛さが足りないかも、と思うとどこでもいいので神社に行くんです。やっぱり、神社の持つ力はすごいですよね。

 

藤井▼もうすごいです。

 

▼神社では、例えばいろんなことを、私たちまあ、煩悩全開でお願い事するじゃないですか。でも、たくさんの神社に行っているうちに、だんだんお願い事も最適化されてきてですね(笑)。 藤井▼なるほど、なるほど(笑)。

 

▼「全てお任せしますのでお導きください」とか「世の中を良くするために私を使ってください」みたいな、だんだん、細かいことが削ぎ落とされて、そういうシンプルな形になっていくんですね。これならオールマイティでしょう? 今はどこの神社でもこれ。

 

 頭で考えて、言葉の意味が、というよりも、口にした時にふっと身体の力が抜けて楽になるんですよ。藤井先生も、やっぱり神社へ行くだけで、本来自分がいるべき場所というか、何か大いなるものの一部にぱっと戻れる感じがしたりしますか?

 

藤井▼そうですね、その感じ、分かります。例えば僕が今住んでいるのは、山の中に神社があるところの山のふもとなんで……。

 

▼わぁ、神社のそばなんですか?

 

藤井▼神社の鳥居から歩いて五、六メートルぐらいです(笑)。

 

▼まあ、素敵ですね。そういえば最近神社も、デベロッパーに土地を売ったりしていてびっくりしました。神社の中にマンションを建てたりしてるんですね。

 

藤井▼下鴨神社などもそうですね。

 

▼最初はちょっと違和感も感じましたけど……。

 

藤井▼下鴨神社もお金がなくなってきて、しょうがないから売ったと聞きましたね……。

 

▼ああ……。

 

藤井▼悲しい。

 

▼悲しいですね、神社はやっぱり守りたいものの一つですよね。

 

藤井▼ところで神社を語ることは実は農を語ることに等しい、という側面がありますよね。そもそも神社、神道のコアにある天皇という存在は五穀豊穣を祈る存在ですから。

 

▼おっしゃる通り、深くつながっているのですね。そしてお祭りも!

 

藤井▼秋祭りなんてそうですよね。全部ハーベスト(収穫)に対する感謝、の社会的表現ですよね。その遺伝子が我々にはあるはずなのに、現代の日本政治はそれを潰してきた。

 

▼もう、政治はとんでもないことをやってる。森羅万象の遺伝子を冒瀆して。

 

藤井▼TPPやEPAなんかの外交交渉なんか見ても、政府がやってることはもう定義上、文字通りの売国奴ですね。だって農業が衰退することが分かっててあらゆる農作物の関税を引き下げ、輸入規制を撤廃して自由化し続け、その見返りに自動車の関税を数パーセント下げさせてくれ、ってやってる。

これって、日本の農を売っぱらって、その売っぱらった見返りに関税下げてもらう、で、それで喜ぶグローバル企業にサポートされながら政治活動を継続しようとしているわけですから、農を売ってグローバル企業の政治的サポートを買うっていう売国行為をしていると定義できるわけです。

やってることは極道そのものですよね。っていうか、本職の“極道”の人たちは、極道の看板を堂々と出してますから、今の政府よりもやってることが全然まっとうだっていうふうにも言えちゃいそうですね(苦笑)。

 

▼そういう政府とお仕事をしている藤井先生は、正気を保つために神社に行かれると。

 

藤井▼そうですね、言われてみればまさにその通りです(笑)。

 

▼日本人の中にはこの感性がまだちゃんと残っていますよ。「農」という資産を守ることは、私たち自身を取り戻すことでもあるんです。

 

(第3回に続く)

 

 

前回配信はこちらから↓
『第二回 藤井 聡×堤未果「農」を語る(1)』
『第二回 藤井 聡×堤未果「農」を語る(2)』

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