【鈴木宣弘×藤井聡】「農」を語る(第四回)

啓文社(編集用)

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皆様こんにちは。

前回に引き続き、『表現者クライテリオン』2022年5月号(通巻102号)から2022年9月号(通巻104号)にかけて連載されていた鈴木宣弘先生×藤井聡先生による対談〈「農」を語る〉を全6回に分けてお届けします!

 

「農」を語る――農こそが日本を守る

鈴木宣弘×藤井聡

農は国の本なり。
その姿を立体的に示すことを通じて保守思想を語る。

 

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農業は過保護なのか? 国際競争の中の日本の農業の真実

 

藤井▼噓ですよ! 国の補助金なんて、半分から三分の一ぐらいまで減って、G7の中でも最低です。しかも関税は日本は圧倒的に低くて、多くの外国の農家の方が圧倒的に高い関税に守られている。

だからもう、関税は高いわ補助金は多いわで、どれだけジャブジャブ公的資金で守ってもらってるんだよ! っていうような外国の農家と、TPPやらEPAやらの自由貿易の枠組みで喧嘩させられているのが日本の農家です。もうこれは完全なる残酷物語です。日本の政府は本当に酷い。

鈴木▼外国の農家は補助金漬けで、輸出補助金も使い放題で、どんどん安く売りつけてくる。日本は輸出補助金は絶対に使っちゃ駄目で、国からの保護も一番ないのが現状です。

多くの日本人は、農作物の輸出で栄えている諸外国は「農家に競争力がある」ということが原因だと思っているようですが、それは噓です。実態は、外国農家はあらかた藤井さんの言うように保護漬けなのです。

いわば国家戦略として農業を武器として世界をコントロールするんだ……ということで攻めてくる人たちに、我々は竹槍だけで戦っているようなものですね。

 そういう苦しい状況なのに、そういう実態を何にも知らないで、単にイメージだけで「日本が世界で一番過保護だから、他の国のように競争にさらして強くならなきゃいけないんだ」とか言っている人が日本には実に多い。

藤井▼本当にそうですね。外国は補助金やら関税やらというパワースーツを着てるというのに、日本はもうふんどし一丁で戦争させられているようなものです。どだい勝てるはずがない。

鈴木▼そういう本当の姿も知らないで、日本がだらしないみたいなことを言う人が多い。本当に冗談はやめてくれと言いたいですね。これだけ補助金なしで、頑張って生き延びてる農家というのは、ほとんどが優秀な精鋭部隊です。

 やはり「農は国の本なり」ということを、国民の皆さん、政治家の方々がしっかり意識できるように、藤井先生のような一般経済の先生方がちゃんと言っていただけると、これまで頑張ってこられた農家の皆さんが、さらに元気出していただけると思うのですよ。今大切なのは、日本の農家の「誇り」を大事にすることなんだと思います。その意味でも、「農は国の本なり」という思想は大変に重要だと思います。

藤井▼特に今農業を頑張って支援していかないと、日本はこれからもっと大変なことになりますよね。

鈴木▼中国の爆買いなどの影響で、穀物価格が上がり日本が買い負けをして、なかなか国内に入ってこない。それから化学肥料の原料であるリンやカリも一〇〇%輸入ですから、中国もなかなか売ってくれなくなって、もう肥料を作れなくなるんじゃないかって言ってた矢先に、今度はロシアとウクライナの紛争が起こって……。

藤井▼ロシアとウクライナの小麦輸出は世界全体の約三割も占めているんですよね。

鈴木▼そうです。もう本当に買えなくなってきているのです。その時にですよ、「農業は過保護だから強くするために、もう外に攻めていくしかない」とか言い始めて、農作物の年間輸出を五兆円にすればいいとか(政府は二〇三〇年までに五兆円の目標を掲げる。現在は約一兆円)、農業のデジタル化を進めねばならない、とか言っているのですね。

でもね、まずその前に、どうやって国民に食料をちゃんと供給できるのか、その体制を整えなければ、日本人も飢えるんだということを、考えなくてはいけない。

 安全保障も同じですが、全部輸入でいいのかと。食料を誰が作るんだと。そういうことを今こそ言わなきゃいけないのに……。

藤井▼岸田政権になっても、そこは全然変わってないですね……。

鈴木▼「新しい資本主義」とか「経済安全保障」とは言いますが、なんで「食料自給率」の話が出てこないのか。食料安全保障の話が出ても「お金があれば買える」とか言ってね。正直、もうお金があっても買えない時代なんだと気づかなければいけない。

 

岸田政権と食料安全保障の実態
──保守本流とは一体何なのか?

 

藤井▼菅政権は、新自由主義バリバリの政権でしたし、あるいは小泉さんや河野太郎さんなどの新自由主義的な人がそうするんだったら、もう絶対良くないけど、まぁ理解はできるんですよ。何が言いたいかというと、岸田文雄さんは保守本流を掲げて総理大臣になったんです。新しい資本主義と言い、新自由主義からの決別と言い、経済安全保障と言うその御託自体は、なかなか立派なこと言ってるわけですよ。

鈴木▼それだけ聞くと期待してしまいます。

藤井▼でも蓋を開けてみたら、悲しいことに今まで官僚がやってきたことを“そのまま”やっているんですよ……。これはもうある意味、菅さんや小泉さんとかよりもタチが悪い。

 保守本流だと言って国民を油断させておいていきなり「デジタル田園都市国家構想」なんてぶち上げる。

田園都市と言ったら普通はまず農業です。何と言っても「田」園なんですから。まぁもちろん農業に、ITとかドローンとかAIなどを活用するのも大変結構だとは思いますけど、「田」の入っている田園都市の構想に、なんで農水省じゃなくて経産省的なデジタルの発想なのか、っていうところが意味不明です。

鈴木▼予算が経産省に流れて、そこにぶら下がっている企業が儲かるような政策に結びついている見込みが非常に高いですね。

農家に頑張ってもらう、じゃなくて、農家はもういなくなってもいい……というくらいの発想なんですよ。デジタルで農業を自動化、最適化すれば、農家不在の投資家だけが儲けられるような「デジタル農業」というビジネス形態を、アメリカではビル・ゲイツさんなんかも始めていますよね。そういった流れに繋がっているような面もありますね。

藤井▼ほとんど何か、人間で言ったらサイボーグみたいなものですよね。手を繋いだ時のぬくもりも何もなくて、母親に抱きしめられる感覚もなく、ずっと頭脳に埋め込まれたICチップでヴァーチャルリアリティだけでもう良いじゃないか、っていう軽薄な思想が見え隠れします。

鈴木▼地域もない、コミュニティもない、文化もない。

藤井▼思想的には「認識」と「身体」という対比がありますが、実はこの認識、思考というものと、身体での手触りというものは、コインの表裏であって離れられないものなんですよね。

認識がなければ身体は動かないけれど、身体がなければ認識もなくなる。つまり、国家を作るときに国土を無視するというのは、自殺行為そのものなのです。

 身体を取り戻すのがレジリエンスという意味での「強靱化」であって、このままの日本の新自由主義だとか、経産省的、経済理論的な認識論「だけ」が続くようでは、身体性を喪失して、そのマッドネスという意味での「狂人化」にならざるをえない。

 それは、戦後の西部邁先生たちをはじめとした保守論壇においてすらその傾向があって、地方のコミュニティや民俗だとかを口にする割には、より具体的な農や土木ということをほとんど議論してこなかった。僕はそういう姿勢は、保守思想として根本的に何か間違っているんじゃないかと思いますですね。

鈴木▼保守本流であれば、「農」と「国土」。これがなかったらもう何も始まらないですよね。

藤井▼保守と言うなら、一体何を保守したいんだ、ということが最大の問題になるんです。だとしたら、農と国土こそ、最も大切なものの根幹にある、という実態が見えてくるはずなんです。

そもそも農と国土がなかったら皇室もないのですから。大事なデータをUSBか何かに入れて守っていても、まったくしょうがない。

鈴木▼祖国を守り国民を守るというのは、その土台である国土を守ってこそですよね。それでこそ全ての経済が成り立つわけです。その土台の議論をせずして、何が企業の儲けだ、と。まったく意味がないことです。

藤井▼そんなものは「飯だけ食って生きているだけでいい」みたいな家畜的な話ですよね。

(第五回に続く)

 

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『表現者クライテリオン』2022年9月号 『岸田文雄は、安倍晋三の思いを引き継げるのか?』
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