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【浅田統一郎/藤井聡 対談】財政赤字=悪という考え方自体が有害だ

From 啓文社(編集用) 

今回は『表現者クライテリオン』2021年7月号の掲載されている特別対談を特別に一部公開いたします。

公開するのは、孫子のための「財政論」 中央銀行の政治学」特集掲載、
浅田統一郎先生本誌編集長藤井聡対談です。

興味がありましたら、ぜひ『表現者クライテリオン』2021年7月号を手に取ってみてください。

以下内容です。

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日本は今、どんな経済状況なのか

藤井聡(以下藤井)▼

まず最初に、現状の経済状況についての先生のお考え、そして、それを踏まえて今何をなすべきか、そのあたりからお話お聞かせください。

浅田統一郎(以下浅田)▼

コロナが起こる前から基本的な状況認識も、なすべき対応も基本的にはほとんど変わってないんですが、そのあたりについてはおいおいお話しするとして、

まずは今、マクロ経済と財政金融政策がどんな状況になってるのかについてお話ししましょう。

 アベノミクスは二回にわたって消費税を上げたことによってせっかくのアベノミクス効果がかなり削がれたんで問題はありますけれども、それでもそれ以前と比べると、

例えば失業率が大幅に減ったり、所得も大きく増えてるわけではないけれど幾分増えたり、それなりに効果はあったと思うんです。

 が、コロナによって日本経済も大打撃を受けて、結局、去年は四・六%GDPが減少した。ただそれは、政府と日銀がコロナ対策という名目で財政金融政策をそれなりにやったからその程度で済んだんです。

具体的にいうと、去年は第一次と第二次の補正予算で合わせて六〇兆円くらい出しました。

その中には一人当たり全員に一〇万円の給付金の予算約一三兆円と、GoToキャンペーンってのが二兆円弱入っています。それから、コロナで営業自粛した飲食店への補償等々もこの中には入っています。

まあ十分だとは思いませんけど、比較的大規模な財政政策が行われた。あと日銀も国債を買うことによって、それをサポートしました。

日銀は二〇一七年から二〇一八年にかけては実はやや金融引き締めぎみでいったんですけど、二〇二〇年にコロナ対策として金融緩和を行ってマネタリーベースもマネーストックもそれなりに増えた。

つまり、財政金融のポリシーミックスで、両方とも拡張的にやったわけです。それでそれなりに効果があったので、去年のGDPの落ち込みが四・六%くらいで済んだというふうに考えています。それでも、第二次大戦後最大の落ち込みですが。

 今年は、当初予算が一〇七兆円、これが去年の約一〇三兆円から幾分増えて、一応は過去最高となっていますが、別にだからといって十分なわけではない。

去年は六〇兆円くらい補正予算があったわけだから、やっぱり去年並みの六〇兆円くらいの補正予算が必要でしょう。

コロナ対策費にしても三兆円程度しか計上されていないわけですから、これでは全然足りない。

国債は政府の借金ではない

浅田▼それから、国債の発行残高ですが……。

藤井▼メディアなんかがいつも、政府の借金って言ってるやつですね。

浅田▼ そうです、それが、アベノミクスの前後で、一〇二五兆円から一一一五(1,115)兆円へと増えてます。

藤井▼なるほど。九〇兆円増えたわけですね。で、マスコミなんかは、これが増えたのが問題だと騒ぎ立てるわけですね。

ただ、GDPも五〇七兆円から五五二兆円に増えてますから、GDPと債務残高の比、つまり、債務対GDP比は、どちらも二・〇二と全く変わってません。だから、その視点でいえば財政は全然悪化してないんですね。

浅田▼しかもこの一一一五兆円というのは日銀が持ってる国債も入れた金額。

日銀の国債は事実上政府の借金ではないと私は考えますけども、それが、アベノミクス前には一三〇兆円程度だったのが、二〇一九年には四八〇兆円弱へと増えた。

藤井▼つまり……約三・七倍、三五〇兆円も激増したんですね。

浅田▼債務残高に占める割合でいえば、一三%から四三%までの急増。だから結局、日銀保有じゃない国債、つまり、「正味の国の債務」は八九五兆円から六三九兆円へと減ったわけです。

繰り返しますが、統合政府勘定では日銀は統合政府の一部なわけですから、日銀保有の国債は、政府の借金じゃないんですから

だからこんな状況で、国の借金が大変だから緊縮せよ、支出を切り詰めて増税せよという緊縮派が言ってることは、全く正当ではないんですね。

藤井▼先日、国会で菅総理が、追加対策をするのかと問われた時に、予備費があるから当面はしないと発言しています。

今まさにコロナ第四波の影響で経済がすごく冷え込んでますから、そのうち政府は、追加対策をせざるを得ないと判断するようになるかもしれませんが、

今の段階で追加対策しないなんて平然と国会答弁するくらいですから、この期に及んでも政府は財政出動に対して超絶に後ろ向きな態度だということは否定しようがない状況です。

そんな中、やっぱり令和三年度も、さらなる追加の国債発行による内需拡大策っていうのが必要になってきますよね。

浅田▼そう思いますね。

特にね、菅さんはなんかやる気なさそうに見えますけど、今年もう一回、ほんとならね、国民全員に二〇万円ずつぐらい配るのがいいかと思います。

まあそれが政治的に不可能ならばせめて去年並みにもう一回、一三兆円の予算で一〇万円ずつ配るくらいのことは必要です。
まあそれは金額的には全く可能なんですから、それくらいのことはやるべきです。倍の二六兆円でも全然可能です。

 それから、これも全くやる気ないんでしょうけれども、消費税の減税ですね。〇にしようという人もいますけども、そこまで極端なことは政治的には実行可能性がないんでできないとしても、一〇%から五%くらいに定着させるのが望ましいと思います。

(中略)

藤井▼ただ一方で、(中略)慶應大学の経済学部の土居丈朗さんなんかは、未だに緊縮財政が必要だって議論を引っ込めていません。

(中略)要するに、土居さんはこの期に及んで「コロナ増税」を求めているわけです。

「ケインズ経済学」としてのMMT

藤井▼土居先生たちのおっしゃってること、経済学的に解釈するとどういったところに問題があるとお考えですか。

浅田▼これは、いわゆる国の赤字は問題だとかね、国家財政が破綻するとかね、そういう発想がまず最初にあるんだけどそれ自体が完全に誤ってるわけです

藤井先生もかなり詳しいMMTの議論を通して、財政破綻論自体が間違ってるっていうことを大々的に啓蒙活動してくれましたけど、ただ、MMTというものになぜか反発する人たちがたくさんいる。

そういう人たちはMMTなんかを前面に出すとかえって離れてくんですよね。だけど、私は別にMMTという言葉を使う必要は何もないんじゃないかと思ってるんです。

 例えばランダル・レイとかケルトンとかが言ってることの中で別にMMTという看板を掲げなくても自明の理の話がたくさんある。

例えば、変動相場制の下で通貨の発行権を持ってる日本やアメリカのような先進国の政府は財政破綻するなんてことは現実的にありえない、という話はMMTとは無関係に当然の話です。

それから、政府支出から税収入を引いた収支、つまり国の財政赤字は、拡大することは別に何も問題はない、というのもMMTとは無関係に当然の話です。

 例えば、MMTが誕生する前に提唱されているラーナーの機能的財政理論でも、財政金融政策の目的として政府財政の健全性という観念は財政政策の目的から除外されるべきであると指摘されている。

政府財政の健全性という考え方、つまり、政府財政の黒字が望ましく赤字は悪だという考え方自体が有害だと指摘している。

それは財政政策の目標にするべきではなくて、結局、適度なインフレ率の下で完全雇用を達成することのみを財政政策の目標にするべきだという話で、このアイディアも別にMMT以前からあったわけです。

例えば、今の日本のように二%インフレ目標を適度なインフレ率だと考えて、その下で完全雇用、失業がない状況を保てるような所得を維持する、そのために財政金融政策を使うべきだというのが機能的財政理論なわけですが、これは…(続く)

(『表現者クライテリオン』2021年7月号より)

 

 

続きは表現者クライテリオン』2021年7月号にて

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『表現者クライテリオン』2021年7月号
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