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【鈴木宣弘×藤井聡】「農」を語る(最終回)

啓文社(編集用)

啓文社(編集用)

皆様こんにちは。

前回に引き続き、『表現者クライテリオン』2022年5月号(通巻102号)から2022年9月号(通巻104号)にかけて連載されていた鈴木宣弘先生×藤井聡先生による対談〈「農」を語る〉を全6回に分けてお届けします!

 

「農」を語る――農こそが日本を守る

鈴木宣弘×藤井聡

農は国の本なり。
その姿を立体的に示すことを通じて保守思想を語る。

 

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日本は今、食料危機の真っ只中

藤井▼最後に、鈴木先生はこの激動の時局の中で、これだけは国民に知っておいてもらいたいというのは、どんなところがありますか。

鈴木▼今は、さっきも言ったように、ウクライナ紛争もあって、その前からもう物が入ってこない、買い負ける、肥料も作れない、種も入ってこなければ野菜も作れない、餌が入ってこなければ卵も生産できない、という状況が、目の前に来ているんじゃなくて、もう本当に襲われています。

藤井▼食料自給率がカロリーベースで三七%しかないだなんて、ホントにもう、既に終わってますよね。

鈴木▼そうです。「我々は本当にもう、いつ飢えてもおかしくない」という状況まできているという現実を認識したら、輸出五兆円とか、スマート農業を頑張れば夢の未来がある、なんて言ってる場合じゃないのです。

 それに「米」も問題です。コロナによって所得が減って外食需要も減って、米を食べたいのに食べられない人が増えてしまい、米が余っている現象があります。そこで国は「余っているから米を作るな」と言うのですが、なんで今の苦しい状況で、そんな生産者をがっかりさせるようなことを言うのかと。

「作るな」じゃないですよ! 今こそ米を作って、国が買い上げて、人道支援でフードバンクや子ども食堂を通じて、国内の人々を助ける。世界も飢えてるのだから助ける。それが日本の農業の貢献でもあるわけですから、作らないための金を出すんじゃなくて、今こそみんなで頑張って、生き残ってきた農家が結束して、国民を守るぞという意気込みで、政府は需要を創出すべきです。

需要をしっかりと作るためのお金を出せばいいわけです。需要を作ることが全ての基本なわけですから、そのためになぜもっと、財政出動しないのかと。

藤井▼まったくおっしゃる通りですね。

鈴木▼例えば、米が今年みたいに一俵九〇〇〇円になってしまって、一万二〇〇〇円がどうしても必要となったら、アメリカだったらその差額を一兆円使って出すわけですね。日本の場合は七〇〇万トン分ぐらいを補填するだけなので、三五〇〇億円程度で済むわけです。

また、学校給食で子供たちを守るために、政府が公共調達に変えて、日本の農産物の出口をしっかり作るのに、どれだけかかるかというと約五〇〇〇億円ですよ。それだったら、ちょっと予算を組み替えれば絶対できるじゃないですか。

藤井▼できないはずがありませんね。必要なのは政府判断だけ、ですね。

鈴木▼そういうふうな、他の国が当たり前にやっている政策を「農は国の本なり」の精神で取り戻してください。一刻も早く。

それがあれば、頑張っている農家も結束して「俺たちもっとやるぞ!」と言うだろうし、消費者の皆さんも「一緒にやろう」「俺たちも農業を手伝うよ」となるでしょう。そういう流れを今作らなかったら、いつやるのか。

だから、藤井先生の言われている「農は国の本なり」のその一番の根っこの大事な部分を、今こそ噛みしめて行動を起こす時だと思います。「みんなで一緒にやろうじゃないか」ということを、ぜひ国民の皆さんにご理解いただきたい。

藤井▼それがしっかりできれば、食料自給率も高まりますから、食料輸入によるマネー流出が食い止められて、確実に経済効果が得られますよね。今現在、日本では農水産品の輸入のために八兆円ものキャッシュが海外に毎年流出し続けている。これは途轍もない経済被害です。

一方で食料自給率が高まれば、この八兆円は全て国内に留まるんですから、毎年、それだけで八兆円の予算を使った経済政策をやり続ける、っていうのと同じ話になるわけです。だから食料自給率が低いってこと自身がものすごい“デフレ脱却圧力”であり、デフレ脱却後も強力な「経済成長エンジン」です。

経済学的な視点からいうなら、日本人の一億個以上の胃袋が強力な内需製造装置であって、それ自身が強力な経済成長エンジンだ、ということなんです。なのに政府はバカみたいに自給率を引き下げてそのエンジンの三分の二を毎年ドブに捨て続けているんです。ホントに「アホ丸出し」な話です。

 しかも、農業が日本全国で盛んになれば、各地域の地域経済が支えられるだけでなく、各地の国土の荒廃が防がれ、豊饒な国土、強靱な国土が形成されていくことにもなります。それらを通して作り上げられ、保全されていく豊かな田園風景は、人々の心にものすごく美しく響き、それこそ鈴木先生のように農学部に行かれて日本の自然や農のために戦わねばならぬと思うような子供たちが、たくさん育つのではないでしょうか。

鈴木▼日本が随分良くなる。

藤井▼これ、たかだか年間一兆か二兆円ぐらいの予算でできることでしょう? もう、やってしまいましょう! 岸田さん!

鈴木▼その自然のエネルギーを使った好循環を取り戻せば、全てがうまく回って、自然環境も人も、みんなを幸せにしていける世の中、国土が出来るわけですから。「国土を取り戻す」「農を取り戻す」。ぜひそのために、また一緒に頑張っていきたいですね。

藤井▼はい! 今回は本当に楽しく、有意義な機会となりました。「『農』を語る」の第一弾として鈴木先生に語っていただきましたが、まだまだ語りきれていない部分がたくさんあるかと思います。ぜひまた次の機会に、さらに語っていただきたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。

鈴木▼ありがとうございました。

(完)

 

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『表現者クライテリオン』2022年9月号 『岸田文雄は、安倍晋三の思いを引き継げるのか?』
https://the-criterion.jp/backnumber/104_202209/

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