『表現者criterion』メールマガジン

【藤井聡】「大阪都構想」は万博成功に「重大な危機」をもたらす

From 藤井 聡(表現者クライテリオン編集長・京都大学教授) 

この度、政府関係者、大阪市、大阪府をはじめとした
皆さんのご尽力が実り、
2025年の万博が大阪に決まりました。

この「万博」は、
大阪や日本全体への経済効果など、
適切に開催することができれば、
「素晴らしい効果」が期待されます。
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20181203/

大阪を中心とした多くの国民はその期待故に、
この決定を大いに歓迎しています。

ですが、万一・・・
万博のために「なすべきこと」がなされず、
万博を契機に「不適切な行政」が行われれば、
かえって「巨大な被害」をもたらしかねない、
ということは、既にこちらでお話した通りです。
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20181203/

では、どうすれば、
万博を「適切」に開催できるのか―――?

この点について、一部において
「万博を成功させるためにこそ、大阪都構想を実現すべき!」
という話が、議論され始めています。
https://www.mbs.jp/news/kansainews/20181205/GE000000000000025585.shtml

しかし、よくよく考えてみれば、
「大阪都構想」は、「万博の成功」にとって必要どころか
かえって「大きな障害」となり得るものであることが
見えて参ります。

なぜなら、「大阪都構想」というものは、
「大阪市を廃止」して、
新たに「特別区を設置する」ものだからです。

だから、そのために必要な「事務量」は必然的に膨大となり
その結果、「大阪」が万博に「全力を投入できなくなる」のです。

このあたりについては、
既に、2015年に出版した
拙著『大阪都構想が日本を破壊する』
http://amzn.to/1GF42Us
の中で、次のように指摘しています。

―――――――――――――
・・・こういう「改革」を考える際に、しばしば忘れ去られているのが、次の一点です

「改革を行うにあたって大きなエネルギー/コストが必要となり、改革それ自体によって、疲弊してしまう。そして、具体的な仕事・プロジェクトが出来なくなってしまう」

つまり改革には「改革疲れ」がつきもので、それによって、暫くの間何も出来なくなってしまうのです。

具体的にお話しましょう。

今、都構想に向けて、大阪市、大阪府の優秀なスタッフが大量に投入され、その設計図をまとめています。もうそれだけで、強大な行政コストが「改革」それ自身に投入されているわけですが、問題は、都構想が決まった後で、具体的にどの様な仕組みを設計するのか、という問題です。

そもそも都構想が実現するためには、大阪市役所の機能を、大阪府と特別区に引き継いでいかなければなりません。大阪市役所は35600人の巨大組織です。したがって、その引き継ぎは、未曾有の「超巨大引継事業」とならざるを得ません。

つまり、その35600人の一人一人が、都構想が実現すれば、一体何の仕事をするようにするのかを、調整していかなければならないわけです。

ちなみに現時点の協定書には、大阪市職員の内、約2万人の職員がどこで働くかのおおよその見取り図は示されていますが、(残りの)約1.5万人の職員がどこでどう働くかは決まっていないのです。

このことはつまり、大阪市の仕事を大阪府と特別区に、具体的にどの様に引き継いで行くのか、その具体的な姿は未だ確定していない、という事を意味しています。

そしてその具体的な姿は、都構想が(可決されたら)具体的に開始されると言われている、二年後の2017年の4月までの二年の間に検討することになります。

したがって、大阪市という組織と大阪府の関連部局は、(都構想が決まってから導入するまでの)これからの二年の間、具体的な行政にその行政パワーをつぎ込むのではなく、自分自身の改革のために、とりわけ大阪市役所について言うなら、自分自身の消滅、解体のために、その全力を投入し無ければならなくなるのです。

そして言うまでもなく、都構想が実現した直後においても実に様々な問題、混乱が噴出することは間違いありません。

一人の人間が職場で異動があるだけで、その引き継ぎは、大変に骨の折れる仕事ですよね? そういう引き継ぎが、35600人分、発生してしまうのです。

しかも、「特別区」という仕組みは、今回初めて導入されることになるのですから、そのためにはとてつもない労力が必要になります。

つまり、(これまで様々な問題を抱えながらも)「大阪市民のための仕事」に従事してきた35600人分の仕事が一旦は消滅し、それを部分的に引き継ぎながら新しい仕事を始めなければならないのです。

したがって、都構想実現後も当面の間、おそらくは、準備期間の2年間を含めた少なくとも5年間程度は、彼らの行政パワーのかなりの部分を、自らの新しい仕事を作るための仕事に投入されていき、大阪市民のために十分投入されなくなってしまうのです。
――――――――  ~ 以上 『大阪都構想が日本を破壊する』第二章より ~

つまり、「万博のために都構想」する場合、
その膨大な「移行事務量」のために、
十分な行政パワーを
万博に投入出来なくなることが
真剣に危惧されるのです。

そしてもし、
来年や再来年に都構想が住民投票で可決されれば、
2025年の万博までの準備期間は、
「都構想実現のための行政の『大混乱期』」
と、ほとんど重なることになります。

そもそも、行政の混乱は、
都構想の「導入前」においても
「導入後」においても生ずるもの。

だから「万博」の成功を目指すのなら、
少なくとも万博が終わるまでは、
「都構想」の議論の「凍結」が
必須だと言わざるを得ないのです。

そして、大阪市と大阪府が互いに連携し協力しあいながら、
万博の成功に向けて共に全力を投入すればよいのです。

さもなければ、都構想実現のための
膨大な事務作業のため、
万博の準備に十分な行政パワーと時間を投入できず、
万博が十分に成功しない事が真剣に危惧されるのです。

政治や行政は、
「イメージ」だけに基づいて進めることは、
避けねばなりません。

世界各国からの客人達を失礼のなくお迎えし、
国家的事業である万博を成功させるために必要なのは、
単なるイメージ論ではなく、
「理性的かつ実践的な判断」
なのです。

追伸1
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