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【藤井聡】「陛下のお言葉」から考える辺野古問題 ~沖縄で考えるニッポン~

藤井 聡

藤井 聡 (表現者クライテリオン編集長・京都大学大学院教授)

表現者クライテリオンの最新号では、
防災についての特集に加えて、
 「沖縄で考えるニッポン」
と題した第二特集を掲載しました。

この特集は、沖縄は日本の縮図であり、
沖縄問題を放置し続ける限り、
日本の凋落は避けられない―――
という認識でまとめられたもの。

当方はこの特集の「座談会」にて

「・・・日本人と沖縄人の統合が必要で、そのためにはやはり「権威」が必要なんだと思う。そして、日本においては天皇は最大の権威ですから、権威としての天皇が、沖縄問題を前に進める上では必要不可欠なんだと思う。」

と発言していたのですが、先週まさに、
こうした当方の認識に深く関わる
お言葉が公表されました。

平成最後の天皇誕生日に、
陛下は、来年四月のご退位を踏まえ、
戦争と平和、冷戦後の世界情勢や自然災害等に加え、
大東亜戦争で大日本帝国のために命をかけ、亡くなった兵士達、
そして沖縄がたどった苦渋の歴史に思いを寄せる、
お話をされたのです。
https://www.buzzfeed.com/jp/keiyoshikawa/emperors-birthday2018-01

陛下のお言葉については一つ一つ、
語るべきものがいくつもございますが、
本日はとりわけ、
 「沖縄」
について言及された箇所について、
お話ししたいと思います。

陛下は沖縄について、
次のようにお話しされました。

『昭和28(1953)年に奄美群島の復帰が、昭和43年(1968)に小笠原諸島の復帰が、そして昭和47(1972)年に沖縄の復帰が成し遂げられました。

沖縄は、先の大戦を含め実に長い苦難の歴史をたどってきました。皇太子時代を含め、私は皇后と共に11回訪問を重ね、その歴史や文化を理解するよう努めてきました。

沖縄の人々が耐え続けた犠牲に心を寄せていくとの私どもの思いは、これからも変わることはありません。』

沖縄は今、
「辺野古の基地問題」で、
大きく揺れ、そして、
この問題を通して今、
国民が互いに憎しみあい、
大きく分断されようとしています。

辺野古基地「反対」の沖縄県と反米サヨク勢力、
辺野古基地「賛成」の政府と親米ホシュ勢力。

私は、こういう賛成・反対の構図を目にすると、
心底「げんなり」いたします。

それはかつての、大阪都構想問題の時もそうでしたし、
今の、消費増税問題についてもそうです。

(※ したがって当方は、当方のインタビュー等が
例えばこのような形で、
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-11-16/2018111603_03_0.html
「反対論者」として紹介されることは、
メディアの別を問わず、大変に遺憾です)

そもそも当方にとって重要なのは、賛成や反対でなく、
何が「正しい事実であり真実」なのか、
という一点です。

言い換えるなら、当方の言論活動は、
特定の意見の普及ではなく、
事実誤認の矯正であり、
真実による無知の除去に
向けられているものです。

「特定の意見を通そう」とするから、
そこに憎しみが生まれ、
国民が分断されるのであり、
今の沖縄はまさに、
そうした様相を呈しているのです。

・・・

では、沖縄が置かれた状況を巡る
「事実・真実」とは何なのかと言えば、
次のような「構図」だと、筆者は考えます。

事実1:
敗戦国日本は「真の独立」を果たしておらず、
アメリカの要請を容易に拒否・排除できない。

事実2:
アメリカの要請を容易に拒否・排除できないため、
国民よりもアメリカの要請が優先されるケースが生ずる。
(今、基地『反対派』はこの事実2を強調し、
賛成派を批難しています)

事実3:
一方で、年々中国の脅威は高まりつつあり、
日米軍事同盟の重要性は、年々高まってきている。
(今、基地『賛成派』はこの事実3を強調し、
反対派を批難しています)

こうして基地を巡って、
賛成派と反対派は互いにいがみ合いながら、
国民が分断されはじめているわけです。

賛成派は、
「中国の脅威にどう対峙するんだ!」と憤り、
反対派は、
「アメリカの言いなりじゃないか!」と
憤っているわけです。

そして、国民統合の象徴である今上陛下は、
この分断に心を痛め、
沖縄の人々に「心を寄せていく」姿勢を、
鮮明に打ち出されている――という次第です。

この陛下のお気持ちに報いるには、
我々はどうすればいいのでしょうか・・・?

この点について、
当方は、「事実1」の認識の国民共有こそが、
必要不可欠だと考えます。

そもそも、基地賛成派と反対派がいがみ合いは、
基地が必要だというアメリカの影響さえなければ、
存在しなかったもの。

だとしたら、互いの怒りは、互いではなく、
アメリカに向けられても不思議ではないのです。

・・・ですが、不思議なことに、互いの怒りは決して、
「アメリカ」には向けられません。

というよりむしろ、
ぴょんぴょんぴょんぴょん飛び跳ねながら、
「カ~モン ベイビー アメリカ~ン!」
なぞと、「アメリカさん、もっと来てよ~っ!」と
踊り狂っているのが現状。

これは何とも不思議な光景、
植民地の廃頽ここにあり―――
なわけですが、

繰り返しますが万一、日本が「真の独立国」として、
アメリカと対等以上に交渉できるなら、
こんな対立はそもそもあり得なかった話。

にも拘わらず、
なぜ「真の独立」ができないのかと言えば―――
「事実1=日本は米国の準植民地である」
という事実認識が、
言論界でも世論においても
「ほとんど全く欠落」しているからです。

多くの国民が、
サンフランシスコ講和条約によって、
我が国は真の独立を勝ち取り、
主権を回復した――と思っているわけですが、
残念ながら、それは「ウソ」です。

基地一つ、自分だけで決められないのが、
我が国日本なのですから、
完全なる主権があるとは到底言えない状況です。

(だから、ロシアは、北方領土を返さないのだ、
と先日プーチンが示唆した通りです。
https://www.huffingtonpost.jp/2018/12/20/putin-us-military-base-issue_a_23624128/
変換した途端、そこに米軍基地ができちゃうなら、
ロシアにしたら大事だ、という話です 苦笑)

だとしたら、賛成派と反対派は、
互いにいがみ合う前に、
互いに協力しあいながら、
対等以上に交渉できる日米関係を
作り上げる努力をすべきなのです。

そして、そうした「事実1」をしっかりと認識し、
真の独立を果たすことこそが重要だという一点を
国民全体でしっかりと「合意」した上で、

「真の独立のためには、今、米軍基地が必要だ」
「いやいや、真の独立のためには、今、あえて拒否すべきだ」

などと議論が始めれば良いのです。

そうすれば、お互いの不満は、
互い向けられることなく、
「未だに日本はアメリカの半植民地である」
という状況そのものに向けられ、
日本国民の分断が回避され、
沖縄を含めた真の国民統合が果たされることと
なるでしょう。

もしも私達が
陛下を敬う気持ちが本当にあるのなら、
「半植民地状況にある」(事実1)という
我々が置かれた「真の姿」を、
しっかりとその眼を開き、
見据えなければならないのです。

追伸1:
沖縄、そして日本の「真実」をしっかりと認識するためにも是非、特集「沖縄で考えるニッポン」をご一読ください!
https://the-criterion.jp/backnumber/82_201901/
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