今回は、『表現者クライテリオン』のバックナンバーを特別に公開いたします。
公開するのは前回に引き続き『別冊クライテリオン』掲載の医療現場特別インタビュー記事
「新型コロナ「指定感染症」解除を検討せよ」。
インタビューをしたのは現場医師の北野大平氏(仮名)、インタビュアーは本誌編集長の藤井聡です。
連日、「新型コロナ感染者増加」「医療現場ひっ迫」のニュースが飛び交っていますね。
2020年8月発売の当誌では、すでに「コロナウィルス」とは何なのかを多角的に論じています。
ぜひご一読ください。
以下内容です。
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藤井聡(以下藤井)▼
ここまでは「感染してしまった人」の症状についてお聞きしましたが、「感染する」ということそれ自身についてもお聞きしたいと思うのですが、感染のメカニズムについての見解をお聞かせ願えますか?
北野大平(以下北野)▼
このウイルスは空気感染はほとんどない。基本的にほとんど全て「接触感染」だと思います。
それは僕の経験から確信している事実です。僕は、医者としてインフルエンザ患者を長年診てきました。
そうすると、やはり患者からうつされることが多い。若い頃は毎年インフルエンザに罹ってたんです。
でも、その話を先輩にしたところ、その先輩が、「そこは君、もっと、手、洗わないとダメだよ」って教えてくれた。
その先輩曰く
「患者がくしゃみしたり咳したりするのが、机だとか椅子に着く。
そこを手で触って、その手でおかしとかポリポリ食べたりしたら、それでもう感染してしまう。
だから、徹底的な手洗いをすれば、ほとんど感染なんてしない」
って教えてもらった。それ以後、いつも手洗いを徹底的にすることにしたら、それからもう十年以上、インフルエンザに一回も罹らなくなった。
だから、私の感覚として、インフルエンザは空気感染なんてほとんどないし、接触感染さえ注意すれば感染しない。
で、インフルエンザもCOVIDも感染メカニズムはほとんど同じだろうと考えられてるんだから、手洗いさえしてれば大丈夫だと思います。
藤井▼確かにイタリアとスペインの感染爆発は、サッカーの試合の後の街を挙げた大宴会で起こったと言われてますし、中国の武漢でも、数万人参加の大宴会で爆発したって言われてますから、食事、特に宴会はヤバイんですね。
(中略)
藤井▼ところでもう一点お聞きしたいのが、「医療崩壊」についてなんですが、現場の感覚からしたら、医療崩壊っていうのは、どういう感じだったんでしょう?
北野▼確かに一時期、ヤバイ、という感じがありました。毎日、新型肺炎の患者が担ぎ込まれて、対応がギリギリだったようです。
でも、それもすぐ落ち着いていったし、かつ、そのギリギリだった時だって、きちんとした体制が整っていれば、ギリギリに至ることもなかった。
そもそも、普通の病院さんなどでちょっとでも熱がある患者がいれば、すぐに指定病院に送りつける、っていう対応が取られたので、一時期しんどい状況になったわけです。
しかも、COVIDが回復して、PCRで陰性であることが確認された患者でも、ほとんどの病院が、「風評被害」を恐れて、その引き受けを拒否したんです。
だから、一旦引き受けたCOVID患者に対しては、回復が確認されているのにずっと病床を提供し続けてなければならない、っていう状況もあったわけです。
特に高齢者の場合は、完全に陰性になっても、(COVIDであろうがなかろうが)肺炎になった後はなかなか日常生活に復帰しづらいので、自宅に帰ってもらえないし、他の施設でも引き受けてもらえないという問題があって、それが、指定病院の供給力を疲弊させていたという実情もあったんです。
そのあたりがきちんとクリアできてれば、医療崩壊ギリギリの事態、っていうのも避けられてたんじゃないかと思います。
さらに言うと、医療関係者で感染者が一人でも出れば、彼らが全て自宅隔離になってしまい、医療サービスを提供できなくなるわけです。それがまた、医療崩壊のリスクを拡大させたわけです。
藤井▼なるほど、そういうご苦労があったわけですね。だとすると、指定感染症の規制だけ外せば、医療崩壊は多くの場合で避けられるっていうことですね。
北野▼おっしゃる通りです。さらに言うと、指定感染症だから、運び込まれたら、家族とゆっくり話し合うこともできない。
だから通常は、八十五歳以上の後期高齢者で肺炎患者の場合、人工呼吸器を付けても回復する見込みが実質上とても低いのですが、
そういうことをご家族の皆さんに説明すれば、ほとんどの場合、人工呼吸器を付けるということには至らないことが多いのですが、
COVIDの場合は、家族と意思疎通する機会が十分確保できないので、結局は人工呼吸器を装着するということにならざるを得なくなるわけです。
それがさらに、医療崩壊リスクを高めていたという側面があります。
(中略)
北野▼ホント、TVとかではほとんど言われてない実情が医療現場にはあるわけですが、もう一つ付け加えたいのが、今回のCOVID対応のせいで、他の病気で死ぬ人が増えてしまったっていう事実です。
藤井▼えっ、そんなことがあったんですか?
北野▼今、「超過死亡」というのが統計的にネットなんかで指摘されているのですが、これは、例年の平均的な死者数より、今年の死者数が統計的に多い、その超過分を「超過死亡」というのですが、この超過死亡の原因がCOVID死ではないかと言われてるのですが、それは違うと思います。
藤井▼その理由は何でしょうか……?
北野▼もちろん、COVID感染症が見逃されていたケースもあったと思います。
しかし、COVIDの患者はそれほど多くない。ちょうど先頃、抗体検査の結果、COVIDに感染した人は東京や大阪でも〇・一~〇・二%程度だと報告されてましたが、現場のPCR陽性率のデータからみても、それくらいだと僕は思っています。
だから、超過死亡の原因が全てCOVID死だと考えることはできないと思います。一方で、COVIDのせいで、人々が病院に行かなくなってしまってる。
特に高齢者への医療、介護サービスが、感染症対策ということで大きく抑制されるようになってる。
普段なら病院を受診するレベルであっても、控えてしまい結果として重篤な病態になってしまったということがかなりあったのではないかと思います。
藤井▼なるほど、その結果、トータルの医療需要がCOVIDのせいで縮小してしまっている、
だからその結果、COVID以外の病気で死ぬ方が増えているというバカみたいなことが起こってるわけですね?
北野▼そうです。僕はその可能性が非常に高いと思っている。
しかも、COVID対応している病院の多くが、COVID感染症患者の対応で、ICUをはじめとした病床が使われ、一般のCOVID以外の治療、特に手術を控えるという現象が頻発していました。
これがCOVID以外の病気での死者数の拡大に寄与してしまっていると思います。
藤井▼それが本当だとしたら、凄まじい不条理ですね。
北野▼ホントにそうです。今回のCOVID騒動で一番明らかになったのは、日本の医療体制の不備を露呈してしまったことです。尾身先生や西浦先生をはじめ政府の専門家会議の先生方の発言を聞いていてもそれは感じます。
藤井▼それはどういうことですか?
北野▼彼らも、誠実に頑張っておられると思います。でもいかんせん、COVID感染症のことしか考えていない。
過剰な自粛要請なんてしたら、藤井先生がおっしゃるように経済はボロボロになったり、先ほど僕が申し上げたみたいに、他の病気での死者が増えたりする。
でも、医師っていうのは、目の前の医療の問題にしか関心がない人がほとんどですから、そういう広い視野でものを考えて、ベストの道を探ろうとする医師は本当に限られているんです。
だから政府の専門家会議の先生方も、そういう状況にあるんだろうなと思います…(続く)
(『別冊クライテリオン』2020年8月刊 より)
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