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【呉智英/藤井聡 対談】日本人が列をきちっと守る民族なんて真っ赤なウソ

From 啓文社(編集用) 

今回は『表現者クライテリオン』2021年9月号の掲載されている対談を特別に一部公開いたします。

公開するのは、前回に引き続き「日本人の死生観を問う」特集掲載、
呉智英先生×本誌編集長 藤井聡の対談です。
前回記事も読む

以下内容です。

興味がありましたら、ぜひ『表現者クライテリオン』2021年9月号を手に取ってみてください。

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滅びつつある日本国家

藤井聡(以下藤井)▼

 で、死生観を考えるときの主体として「国家」共同体を据えたとき、やはり、国家がどう死ぬのか、つまり滅びるかまで先駆的に覚悟することになるわけです。

国が亡びるとは一体何かについてはいろいろと定義はあるのだろうと思いますけど、僕は次のようなものをイメージしてるんです。

まず、経済的にどんどん凋落していって、新自由主義的な改革が極限まで進められ、グローバリズム的なものが日本に際限なく入ってくる。

そうなると日本国家のお家柄、つまり国柄、国体が溶解してほとんど自と他の区別が付かなくなる─これが国家の崩壊というんだろうと思うんです。

でもまぁ、もうほぼ外国と日本の区別が付かなくなりつつあるような気がしますから、メチャクチャ日本は昔から変わってしまって、ほとんど滅んでるような気がしますが。

呉智英(以下呉)▼

それはね、歴然と変わってますよ!

日本の国柄喪失─裏千家の家元が国柄を完全に誤解しているという悲劇

呉▼その辺のところもね、多くの人が誤解があってね。

千玄室(せんげんしつ)というもう九十幾つのお茶の先生がいて、これが産経新聞でコラムみたいなのを書いてるんだけど、でたらめなこと書いてるんだよね。

藤井▼おお、そうなんですか!?裏千家の家元で、文化勲章とかいろいろ取ってる滅茶苦茶エライ人ですよね。

呉▼例えばね、彼は「日本人は昔から行列を作って列を乱さない民族だった」なんて言って、最近それが乱れてるなんて嘆いてみせてるんですが、これ全くの噓なんです。

藤井▼そりゃ全くの噓ですね。

呉▼昔の方が当然列を乱していたんです。

藤井▼そうです。関西なんて誰も列なんて作らなかったですよ。

呉▼そうそう。名古屋でもそう。

藤井▼東京ではいつも駅とかエスカレーターとかで並んでて、不気味な人たちだなぁと思ってましたよ。

呉▼例えば二重橋では、昭和二十年代に何人も死んでるんです。列を乱してるから人が死んでるわけですよ。彌彦神社ではその二、三年後にやっぱり百何人も死んでる。

藤井▼将棋倒しですね。よくありましたよね。

呉▼だから日本人が列をきちっと守る民族なんて真っ赤なウソなんですよ。

あるいは、ちょっと前までは一家はちゃぶ台を家族で囲んで、学校であった話だとか何だとかをお父さん、お母さんと話し合っている光景があったけど今はこれがなくなった、って言ってるんですが、これも真っ赤なウソですよ。
だってちゃぶ台なんていうのは明治末期に支那から入ってきてる風習で、日本人は昔は皆、箱膳で食べてたんですよ。

藤井▼そりゃそうですよね(笑)。

呉▼しかもテーブル囲んで、会話をするなんてことは……

藤井▼ダメですよね! 昔はそういうのダメだった。日本人は食事をする時に……

呉▼しゃべっちゃいけないんです。

藤井▼そうなんです。食べる時にしゃべるのは、はしたない、っていうのが昔の常識だったですよね。

呉▼今でも、禅宗のお寺では当然そうです。

ところが、千玄室は禅宗に関連するお茶の家元やってたくせにそれすら知らない。なんでこいつはこんなバカなことを書いてるんだろうと思ってね。

藤井▼もう彼の周り全体が腐敗してるから、彼がどれだけ腐敗しても誰も指摘しなかったんでしょうね。

呉▼なんだかよく分からん。

でね、つまり何をここで言いたいかというと、つまり日本人が何をやってきたか知らないまま、漠然と抽象的で素晴らしい国柄のことをもてはやし、それが失われたって言って勝手に嘆く

素晴らしいも素晴らしくないも事実だったものが我々を作ってるわけだからね。それが分からなくなってるのはすごくまずい。

崩れ去りつつある「国体」

藤井▼確かに。

今、保守的な「気分」や「ムード」が、安倍内閣以降特に日本に蔓延しつつありますが、そういう千玄室みたいな適当なウソ話で勝手に国柄を決めつけて、それがなくなったとか言って日本を憂う風潮が濃密になってますね。

それをいわゆる日本文化のコアのお茶の家元がやっちゃってるっていうのが凄まじい(苦笑)。

それこそ、日本の「国柄」がなくなりつつあることの最典型例になってますよね。

 さらにいうと、国柄は国体とも言いますが、その国体のど真ん中に鎮座する皇室の在り方についても、昭和、平成、令和と来て大いに変わりつつあるように危惧します

三島は、まさに日本の国柄、国体の喪失を憂えた人物ですが、彼が晩年言ったのは、

そういう国体の喪失する現代社会の最後のアンチが結局天皇だ、

っていう話ですが、そういう感覚も失われつつあると思います。

もはや週刊誌の皇室記事は、「ビッグスター」を扱ってるような感覚でしょうし。

呉▼藤井さんは今、「ビッグスター」って言ったけど、私はね、皇族の「芸能人化」って言ってるの。

藤井▼ははは(笑)、そういうことですね。

呉▼それでね、佐々淳行っていう警備の親玉のような人がいましたが、彼の記録によると、一九七五年に伊勢神宮に今の上皇のご夫妻が、皇太子夫妻としてお参りしたの。

その時にミッチーブームで、美智子様が大人気だったわけ。

そうなるともう伊勢の周辺の方に何万人という群衆が集まってね、ものすごくミッチーコールが起きてるんだって。ミッチー、ミッチー、こっち向いてーって。でね、そのうちそれのみならずね、ミッチー握手、握手って。

藤井▼あかんでしょそれ(笑)。

呉▼そしたら反対側からずるいぞ、ずるいぞ、俺も握手って。

藤井▼もうだめですって(笑)。

呉▼もう全然ね、皇室への敬意もへったくれもないんですよ。

藤井▼とんでもないですね(笑)。

呉▼共産主義者が皇室を侮辱するのはいいんですよ。そういう思想なんだから。

そこをね、まあどういうつもりで書いてるのか分からないけど、佐々淳行が書いている。

これってつまり、天皇制が右側からも左側からも大衆に負けてるわけです。

藤井▼ほんとそういうことですね。

呉▼だから大衆社会になっているがゆえに逆にそれに乗っかる形で天皇制が残ったわけだから、そこで完全に自己崩壊を起こしてるわけですよ。

藤井▼本当にそうですね……ここで改めて…(続く)

(『表現者クライテリオン』2021年9月号より)

 

 

続きは『表現者クライテリオン』2021年9月号にて

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『表現者クライテリオン』2021年9月号
「日本人の死生観を問う」
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