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【明日16日発売 最新号より先行公開】
巻頭コラム:鳥兜
第二次大戦後、世界はいわゆる「戦後レジーム」に基づく秩序形成を維持してきた。日本はその中で極東の繁栄を築きあげた。しかしその一方で、真の主権を持つことは一貫して許されることなく、米国の軍事力の「庇護」の下、自主独立が叶わぬ国家運営を余儀なくされ続けた。
だから我が国の悲願は戦後レジームからの脱却であり続けた。
そんな中、米国でトランプ大統領が既存秩序の破壊者として誕生し、戦後レジームを根底から転換させる大なたを次々と振るいはじめた。安保体制においてはドンロー主義を掲げ、南米大陸を中心とした西半球の米覇権を強化する一方、極東、欧州、中東を含む東半球に対するコミットを引き下げ、同盟国の軍事的プレゼンスの強化をぶち上げた。
このドンロー主義は、戦後レジームを大幅に希釈化させつつ、それによって生ずる勢力均衡の空白を米国の同盟国たちの勢力拡大で埋めんとする新たな世界レジームを導くと捉え得るものだった。それを「ドンローレジーム」と呼ぶのなら、その中でなら我が国日本は戦後レジームの軛から解き放たれ、真の独立自尊の道を歩み出すことができるはず、であった。
しかし、事態は一変する。トランプ大統領はドンローレジームの中心理念であった「東半球におけるコミットメントを引き下げる」という大方針を破壊する暴挙に出たのだ。
イスラエルと共に、イランに攻撃を仕掛けたのだ。
とりわけアメリカが不可逆な状況に自らを追い込んだ暴挙が、「ハメネイ師殺害」であった。
これでイランは徹底的に戦うことが決定づけられた。今やもうアメリカがこの戦いから手を引くには、徹底的な軍事行動の末に十分な成果を得たと国内外に示し得る「真の勝利」を得るか、実質を伴わぬ勝利宣言を掲げつつ誰の目から見ても「敗退」と言わざるを得ない形で退くか、しかない。前者ならドンローレジームは完全に破壊され、後者でもまた米国の世界的評価が凋落しドンローレジームは崩壊する。
つまりトランプ大統領は就任以後、既存の戦後レジームを破壊したように、自分自身が作り出さんとしたドンローレジームもまた破壊してしまったのだ。
何と愚かな──。
かくして世界は、トランプ大統領の乱暴な振る舞いによって秩序形成の源となる「レジーム」を失い、「ノーレジーム」となってしまった。
レジームがあれば、良きにつけ悪しきにつけ、そこには一定「ルール」がある。無論、戦後レジームでは日本に真の主権が許されず、過剰にリベラルなポリコレが横行する。しかしだからといって、むき出しの欲望や俗情で戦争を仕掛けることは許され得ぬものであった。
しかし、ノーレジームとなれば、むき出しの欲望による外交安保が許されることになる。
かくして世界は、ノーレジームの時代に突入した。
このノーレジーム下で生き残ることが出来るのは、「強い者」だけだ。我が国も生き残りを欲するのなら、積極財政にせよ原発再稼働にせよ核武装論にせよ、これまでのレジームをかなぐり捨てる他ない。そして、新たなレジーム構築に自ら参画するに足る国力を、万国に響き得る公正と正義を携えつつ増進する以外に、なすべき事など何もないのである。
いつもお世話になっております。『表現者クライテリオン』事務局です。
本日は、いよいよ明日16日に発売となる最新号より、巻頭コラム「鳥兜」を全文公開いたしました。「ノーレジーム」の時代というかつてない危機を前に、我々はいかなる思想的足場を築くべきか。本誌の特集論考を、ぜひお手元でお確かめください。
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