2024.02.16
こんにちは。京都大学の藤井聡です。
この度、表現者クライテリオンより、インフラ論を全面的に真正面から取り上げる特集号「日本を救うインフラ論」を発刊しました。
アマゾン:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CSYPJBG7
定期購読:https://the-criterion.jp/subscription/
当方の大学の所属講座分野名(つまり研究室名)は「交通マネジメント工学講座交通行動システム分野」、要するに、人間行動(あるいは心理学、社会科学)の視点から交通インフラ政策論を考える研究室ですから、クライテリオン7年目にして初めて、当方が本学職責上の研究テーマの特集の編纂を試みた、という次第です。
そして、サブタイトルは、「今、真に必要な思想」。
そもそもインフラとは「インフラストラクチャー」の略語であり、この英語を日本語訳すると「下部構造」です。つまり、道路や鉄道等は、我々のこの社会の諸活動の「下部構造」であり、「土台」をなしているわけです。
いわば、樹木で言えば枝葉に対する「幹」、樹木全体に対する「根」を意味するのが、インフラなわけで、幹が太くなければ大きな枝葉が維持できないように、根が脆弱であれば巨木が育たないように、インフラが貧弱であれば産業も経済も社会も貧弱なものにしかならないのです。
ですから、日本の再生のためには、インフラをしっかり考えることが何よりも大切であり、発展途上国や新興国、中進国はもとより、あらゆる日本を除く先進諸外国がインフラ投資に躍起になっているのですが…日本でだけ、そういう認識が、政界は言うに及ばず、思想界、言論界においてもほとんど見られないのが現状です。
だからこそ、今、インフラ論を巡る実践的思想は「今、真に必要な思想」に他ならないのです。
そんな思いで編纂した、今回の最新号のインフラ大特集『日本を救うインフラ論』、是非とも一人でも多くの方にお読み戴きたいと思います。
本企画の趣旨をより詳しくご理解戴くために…今回、ご執筆、ご登壇頂いた皆様方にお送りした企画趣意書、下記にご紹介さし上げます。
どうぞ、よろしくお願い致します!
表現者クライテリオン編集長
京都大学大学院交通マネジメント工学講座交通行動システム分野教授
藤井聡
我が国の国家的凋落は今やもう、尋常でない水準に達している。そしてその凋落を導いているとしばしば言われるデフレや少子高齢化等の諸問題のさらに背景に存在している根源的原因が、社会、経済を支える下部構造「インフラストラクチャー」(すなわち「インフラ」)に対する国民的無関心だ。
我々の社会・経済活動は全て、道路や鉄道、上下水道や防災施設、そして、資源・エネルギ・食料・情報に関する各種インフラの「上」で展開されるものであり、そうした各種インフラの質が劣化(あるいは高度化)すれば社会・経済活動も必然的に質的量的に劣化(あるいは高度化)する。
かくして世界中のあらゆる国々は例えば途上国は発展するために、例えば先進諸国はその先進国の地位からの転落を避けるために、可能な限り戦略的、かつ大規模・迅速にインフラ投資を進めんとしている。
ところが我が国においては、国家の繁栄と存続に向けての国家的意志の衰弱化が徹底的に進行した20世紀後半から、こうした「国家」として当たり前のインフラ投資が著しく滞る事となってしまった。その結果、その下部構造の上で展開するあらゆる社会・経済活動が低迷し、地方の衰退はもとより、国家的防災力も各種産業の国際競争力も著しく低迷し、デフレが加速し国家経済が停滞し、それらを通して日本の総合的国力が激しく衰弱し続ける事態への立ち至ったのである。
それにも拘わらず、日本の学界や政界、言論空間は「改革不足」こそが国力衰退の原因だと決めつける論調に支配された。心ある言論人達においても「マクロ経済の衰退」を論ずることはあっても、個別具体的な「インフラ」投資の低迷こそが根源的問題だと指摘する批評は著しく限定的であった。すなわち、インフラに対する国民的無関心こそが、日本国家の激しい凋落の元凶であったのだ。
だからこそ今、我が国において「真」に求められているのは、血肉の通わぬ理念や机上の空論に終始かまける態度を改め、客観的かつ総合的な状況認識に基づく大局的かつ個別具体的なインフラ論を基軸とした地域再生、国家再生プロジェクトを考え、実践せんとする実学的思想とそれに基づく実践なのである。ついては本誌ではこうした実学的思想に基づ「日本を救うインフラ論」を包括的に論ずる特集を企画した。
以上
追伸1:「日本を救うインフラ論」、是非下記よりお取り寄せください。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CSYPJBG7
追伸2:この機会に是非、表現者クライテリオンの定期購読もご検討ください。
https://the-criterion.jp/subscription/
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