日本人には、西洋のユダヤ人問題はわかりにくい。そもそも彼らの宗教に縁遠い。宗教抜きで見ても、ヨーロッパとの特殊な関係に起因するため、他の地域の人々には理解が難しい。
東欧やイベリア半島にもトルコにもイランにもユダヤ人は住んでいた。イランはもともと古代ペルシャ帝国である。バビロン捕囚を行った新バビロニア帝国は、アケメネス朝ペルシャのキュロス2世に征服された。キュロス王はユダヤ人がカナンの地に戻り神殿を再建することを許したために、聖書のエズラ記に好意的に書かれている。イスラエルのイラン攻撃は、ユダヤ人に寛容だったキュロス2世の恩を仇で返すようなものである。
但し、キュロス王はユダヤ人の宗教にだけ寛大な態度であったわけではない。ペルシャの宗教はゾロアスター教である。キュロス王は、征服した帝国内の異民族統治のために、それぞれの民族に自分たちの宗教についてのレポートを提出させた。エズラは、この命令に従ってヤハウェの神についてレポートを書くためにイスラエルの古い伝承を集め編集した。その提出レポートがユダヤ教の聖典の起源だと言われている。キュロス王が異民族の宗教に寛大だったのは秩序維持のためで、彼らが自分たちの宗教を守ることによって帝国内の反乱を防いだのである。ユダヤ人にカナンへの帰還と神殿の再建を許可したのも、ペルシャ帝国に対する反感を抱かせないようにする統治政策の一環である。
この時、カナンに帰還せずにバビロンに留まったユダヤ人も少なからずいた。長い抑留生活の間に、その地に生活基盤をつくり経済的に成功していた「能力の高い」ユダヤ人は、当時の地域最大の都市での成功を手放したいとは思わず、ユダヤ教を守りながらペルシャ人とともに生きることを選択した。ニューヨークで成功した者が、資産を放棄して「ひいおじいさんの故郷」のモンタナに戻りたいとは思わないようなものである。カナンに戻ったのは、信仰心や使命感の強い人々と、抑留生活に馴染めず貧困状態にあったユダヤ人であった。その後、カナンがローマ帝国の支配下になると、ユダヤ人はヘレニズム文化圏にも移住して拡散していく。その一部が東欧地域からロシア方面に移り住んだアシュケナージ系のユダヤ人である。イスラエルの指導者は、東欧のアシュケナージ出身が多い。
さて、話を現代に戻す。いまイランを爆撃しているトランプ大統領とネタニヤフ首相だけが破壊者なのではない。第一次大戦中にオスマン帝国を崩壊させるために、植民地主義のヨーロッパの国々が到底実現できない約束をしたときから、問題は始まっている。1915年のフサイン・マクマホン協定(オスマン帝国領内のアラブ人を蜂起させるために、第一次大戦後にアラブ人の独立国家を約束した協定)、1916年のサイクス・ピコ協定(大戦終了後に英仏露がオスマン帝国の分割を決めた秘密協定)、1917年のバルフォア宣言(ユダヤ人の協力を取り付けるために、英外相バルフォアが、パレスティナにユダヤ人国家を建設することに同意)である。俗に、イギリスの三枚舌の外交という。
当時のヨーロッパの社会状況を知るのに、ヒレア・ベロックの『ユダヤ人』という最適な本があるのを思い出した(Hilaire Belloc “The Jews” 1922)。この本は第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期、ホロコーストに至る直前の反ユダヤ的感情が高揚した社会情勢の中で書かれたが、現在のパレスティナ問題を予見していたかのような問題が提起されている。
ヒレア・ベロックはフランス系イギリス人で、オックスフォード大学を卒業してから政治の世界に入り、のち、出版活動に携わる。その活動を通して、G.K.チェスタトンの弟のセシル・チェスタトンと協力関係にあった。以下、彼の本を手掛かりに現在のイラン戦争の背景について考えてみる。
ベロックは「正義を行う試みとして」この本を書いたと、まえがきに記している。執筆当時のイギリス国内に蔓延するユダヤ人への複雑な感情や非難や敵意を持ち込まず、ユダヤ教思想にも触れていない。宗教的アプローチは解決を遠ざけるだけのものだと見なし、非宗教的な視点から、対立する双方が相互に現実的な解決を考えるべきだという「公平な立場」をとっている。宗教対立を棚上げにして、現実の政治問題を解決しようとしたウェストファリア会議と同じ方法である。
「ユダヤ人問題は、ほかに類似した例が見つからないような問題」だと、ベロックは言っている。「その問題が生まれた歴史的社会的現象が独特」であり、「現実にヨーロッパと文化・伝統・人種・宗教がまったく異なる」ユダヤ民族が他の民族とともに居留していることで生じる。ベロックは、この問題を一般化して「国家のような有機的組織の中によそ者集団がいる」ことで生じる緊張と捉え、それをどのように和らげるかが、ヨーロッパでの長年の問題なのだと考えた。
「有機的組織とよそ者」というのは、生物界の「寄生」や「共生」に似ている。蟻とアリマキ、イソギンチャクとクマノミの関係など、異なる生物同士が互いに利用し合って生存を有利にするような関係である。しかし、ユダヤ人問題での宗教や習慣の違いは、平穏な共生社会を作るには複雑すぎた。寄生する側に、非常に強固なネットワークや結びつきが存在するのである。
ユダヤ人問題は、ローマ時代以来、西欧・東欧・ロシアに通底する問題で、現在のヨーロッパ諸国がロシアを異質なものとして恐怖心を抱いているのが不自然に思える。ユダヤ民族は「文化・伝統・人種・宗教が全く違う」「よそ者集団」であったことが問題の根底にあるが、ロシアはオーソドックスというキリスト教地域である。だからこそポグロムのようなユダヤ人虐殺があった。敢えて言えば、ロシアは「タタール支配を経験した」「ヨーロッパの田舎者」であるだけで、その土地に根差した文化をもつ。彼らはコスモポリタンではなく、定住が基本のヨーロッパにとってユダヤほど「異質」ではない筈なのだ。
ヨーロッパと相容れない、ユダヤ民族の「文化・伝統」というのは、彼らの「物質主義」と「国際主義(コスモポリタン)」と「能力主義(頭脳の明晰さに価値を置く)」にあるのではないかと思われる。これらを完璧に体現したのがモルデカイの一族のカール、即ちカール・マルクスだろう。社会主義という考え方はフランスで起こったが、これを「物質を前提にした理論」にして「国際的な(普遍的な)運動」にしたのがマルクスである。モルデカイは旧約聖書エステル記に、虐殺から民族を救ったユダヤの英雄として登場する。
ユダヤ金融で有名なロスチャイルド家のようにユダヤ人は裕福だと思われがちだが、実は大半のユダヤ人は貧しく、寧ろ貧民の群れなのだという(これはベドウィン時代から変わらないようだ)。「一握りの富裕層と赤貧の大衆との資産格差がどれほど大きいか」ということを当時の西洋(とくに英仏米)では体験的に知っていると、ベロックは言う。1922年に観察されたユダヤ社会の大きな経済格差は、まさに現代のアメリカの様相である。「健全なヨーロッパ共同体」にある「分配が行き届き、堅実で、永続し、相続される富」の社会ではない。ユダヤ人は西洋の伝統から排除されていた。ユダヤ人の富は、西洋貴族のように伝統的に相続されたものではなく、一時的なもの(成金)なのだという。
ユダヤ人は「吸収されない民族」だと、多くの本に書かれている。例えば、ある民族が勢力の大きな民族に吸収されて消えてしまうというケースがある。中国がチベット人やウイグル人やモンゴル人から彼らの言語や文化を取り上げ、漢化政策を行うのは、強制的に「吸収」してしまおうという政策である。しかし、ユダヤ人は決して吸収されることがなかった。それが歴史的事実なのだとベロックは言う。
宗教的習慣や家族的習慣を変えないことは、寄留先での社会生活で摩擦を起こす。ユダヤ的な異質さを保ち続けることでヨーロッパ人に嫌われ差別され排除されるが、差別されることでユダヤ人はますます頑なになったという悪循環でもあるだろう。その溝が深まったのには、ヨーロッパ側の事情もある。中世末期の十字軍やレコンキスタによってヨーロッパ外の世界との接触が増えたことで、キリスト教的ナショナリズムが勃興し、この頃から異質なユダヤ社会に対する嫌悪や差別感が強まった。シェークスピアなど多くの文学にもユダヤ人が登場するが、いずれもあまり好意的には描かれず、ディケンズの描くユダヤ人は犯罪人だったり悪徳だったりと、西洋人のユダヤ観が見て取れる。
定住する西洋人は一族がその土地に住んでいるが、遊牧民のユダヤ人は移動することに慣れていて、親戚が他国に散らばっていることも珍しくない。国際的であるということは愛国心に乏しいということで、居住地の共同体から疎外される。ほとんどの場合、ヨーロッパの歴史では、ユダヤ人はゲットーに隔離されたり、追放令によって締め出されたりしてきた。時代によっては官僚機構の中に紛れ込んだり、融和的な時代には貴族と婚姻関係になって社会的地位を得たりすることもあったが、結局、同化はできなかった。
ベロックは、この問題の解決には、歴史的に見て「排除」か「隔離」という方法しかないという結論に達したようだ。「排除」には、敵対・追放・吸収という方法、「隔離」には強制的な遮断と双方の合意による「認知」という方法があり、それぞれが歴史の中でたびたび試されてきた。ベロックは、「認知」という解決案以外はどれも「実行不可能」か「不道徳」なものであり、「認知」という解決のためには、双方の努力と協力が不可欠だと考えた。
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ベロックは、ユダヤ人が欲したのは「安全」であり、たまたま寄留する場所でも安全であるという保証が欲しかったのだという。そのための虚構が、ハンブルクではドイツ人になり、パリではフランス人になり、ニューヨークではアメリカ人になることだった。それは「人間は愛国者であると同時に超国家主義的でもありえる」という近代的な理性主義の虚偽の上に成り立っていた。ユダヤ人が非ユダヤ国の国籍で生きている限り、居住する非ユダヤ国とユダヤとの謂わば「二重国籍」状態になる。どちらの国に忠実に生きるのかという問題が、ユダヤ人をもヨーロッパ人をも悩ませるのは、忠実を捧げる「ユダヤ人の国」が存在しないからだ。それならばユダヤ人がユダヤ人の国家の国籍を持てるようになればいい……。
西洋側にもユダヤ側にも問題があるなら、双方が互いに努力しない限り解決は難しい。しかし、歴史を見れば、解決策などはないのだとベロックは言う。ユダヤ人は、千年経っても二千年経ってもヨーロッパに同化しない。現実にユダヤ人がヨーロッパに散らばっている限り生じる様々な摩擦や軋轢をなんとかしたいという現実の中で、「考えられる方法のうち、これしか残されていないのではないか」というのが「イスラエル国家」を「認知」することだった。
ユダヤ人の国家建設は、第一次大戦前後のヨーロッパにおいて反ユダヤ主義が強まるなかで現実的になり、ユダヤ人の国を「どこ」に作るのかがヨーロッパ側で検討された。アフリカや南米も候補にあったという。ユダヤ人の間で「シオンの丘」に帰還しようというシオニズム運動が組織的に始まったのは、1882年のことだった。1890年にウィーン生まれのナタン・ビルンバウムというユダヤ思想家が、この運動を「シオニズム運動」と名付けた(鶴見太郎『シオニズム』)。
ベロックが、考えうる実現可能な方法のなかで最も「よさそうな案」が、シオニズムだと考えていたのは、このような社会状況を踏まえたものである。ユダヤ人の国家ができても世界中の全ユダヤ人を収容できないだろう。その場合、寄留地にそのまま残るユダヤ人のパスポートは、寄留地ではなくユダヤ人国家のものにすればいいと考えていたようだ。ユダヤの国籍があれば、堂々と自国に忠誠を尽くせる。一方で、彼らは寄留地に既に生活基盤を持っているのだから、シオンへの帰還を選ばず、寄留地の国籍による昔ながらの虚構のもとでいままでどおり暮らし続けたいと思うユダヤ人がほとんどだろうとも、彼は予想していた。バビロン捕囚のときに、ペルシャに留まることを選択したユダヤ人と同様である。そして、ユダヤ人が寄留地に住み続ける権利として「あなた方の大聖堂や修道院も城も、私たちのお金で建設されたのですよ」と言うのをヨーロッパは無視できるだろうかとも言っている。現代の政治献金の力と同じである。
ユダヤ人を「認知」する方法として、シオニズムは「他のアイデアよりは望ましい」としながらも、そこには別の問題があることを、ベロックは認めている。第一に、シオンの丘にユダヤ人が帰還することは、全世界のキリスト教徒とイスラム教徒の感情を無視した案である。また、国家としての軍事力と警察力を誰が担うのかという現実の大問題がある。他国によって防衛され、治安を維持される国家は「保護国」である。ベロックがこの本を書いた1922年は、列強によるトルコ領の分割が始まっていて、ユダヤ人の国家がパレスティナに作られるとしたら大英帝国の保護国になるのだろうと予測した。けれども「ユダヤ国家の樹立を強国に委ねたり、まったく異なった別の国民の軍事的・経済的犠牲を頼りにすること」は、不安定で永続しないし、保護国の国民の怒りを買い不正を招くといった悪影響を伴うものであって、「英国が保護国となるという実験は失敗するだろう」と悲観的でもあった。
ユダヤ人の国家が実現しないまま第二次大戦を迎え、ユダヤ人問題はホロコーストという最悪の結果を招いてしまった。戦後、その目を覆うばかりの惨状に衝撃を受けたヨーロッパ人は、戦前戦中の高揚したユダヤ人差別に罪悪感を覚えるようになった。「反ユダヤ主義」は不道徳なものだと定義され、「絶対的な悪」となった。サルトルは、戦後『ユダヤ人』(”Reflexions sur la Question Juive” 1954)で、ヨーロッパ人の罪の大きさを示唆している。
キリスト教徒の贖罪意識がイスラエル国家の樹立を現実のものにした。けれども、ヨーロッパ人のものではない「パレスティナ人の土地」によって自分たちの罪を贖うという宗主国意識の傲慢さが、中東全域にどれだけの禍根を残したかは周知のことである。更に、ベロックが懸念したように、ユダヤ人の国家が(戦後の覇権国である)アメリカの「保護国」になったことで、この地の混乱は倍増した。パレスティナ問題を予見していたと言える。
第二次大戦後、すでにアラブ人の居住区であったパレスティナをユダヤ人に分割するという1947年の「パレスティナ分割案」は、在米ユダヤ財閥の投票獲得を当てにしたトルーマン大統領の国連への圧力によって成功した。翌年、アメリカの後押しによってユダヤ人の国は独立国家イスラエルとして認められ国連に加盟するが、アメリカのユダヤ財閥の圧力でパレスティナは主権国家として認められなかった。しかも、イスラエルの3倍もの人口をもつアラブ人の権利は、ユダヤ人が獲得した面積の半分以下になってしまった。
(1988年にアラファトがパレスティナ国を宣言し、2026年には国連加盟の約8割の国がパレスティナを独立国家として認めるようになった。イスラエルとG7は、ユダヤ資本の圧力のため未承認のままであったが、ガザでの悲惨なありさまによって、ヨーロッパの中にパレスティナを国家として承認する国が出てきて、2025年にG7内でも英仏加が承認した。なお、敗戦国でアメリカに依存する日独伊と韓国は承認していない。)
サルトルが、実際にはフランスに残ったユダヤ人のほうが多かったと言っているように、イスラエルが建国されても、ユダヤ人たちのほとんどは、長年住み慣れた「故郷」のようなヨーロッパに留まった。
シオンの丘に戻らなかった富裕なユダヤ人たちは、シティからウォール街に基盤を移してアメリカ人となった。物質主義で国際主義の頭脳集団がアメリカを牛耳るようになった。AIPACというシオニスト団体はその資金力で議会に強い勢力を持っている。中東で全方面を敵に囲まれたイスラエルという人工国家を支援・維持するための組織がAIPACといえる。
トランプ政権発足時にイーロン・マスクがUSAIDという組織を機関銃のように解体した。この組織は貧困地域の食糧や医療や教育を支援して、NEDに資金を提供していた。NED(National Endowment for Democracy /全米民主主義基金)は、アメリカが世界中に「自由と民主主義」を広めるための組織である。途上国や紛争地域の現場で働く人たちは「まじめないい人」たちが多いが、援助を通して、独裁的な国家やアメリカにとって都合の悪い政府に内政干渉をして、アメリカの世界支配の地ならしを目的とするネオコンの組織である。NEDはCIAの戦略で活動していた。資金はUSAID、戦略はCIAである。冷戦時代は東側諸国、冷戦終結後は反アメリカ的な国家の対立勢力や市民団体に資金を投入して、内乱を起こさせたり選挙介入をしたり、国内の分断を目的に活動していた。ウクライナでもネオコンのヴィクトリア・ヌーランドと共に選挙介入を行い、彼らの活動が限界を超えたと認識したプーチンの軍事進攻を招いた。(遠藤誉)
ネオコンを目の敵にしているトランプは、手始めにUSAIDを(乱暴な手段で)解体して、NEDの資金源を断った。他国への介入に資金が流れるネオコンのやり方を嫌っていたトランプは、組織ごと解体してしまったのだ。戦後、日本もGHQに同じようなことをやられたのだから、このようなお節介をやめさせるのは大変結構なことではあるが、USAID解体で一番得をしたのが中国だ。中国でもCIAやNEDの工作員が活動していたが、資金を断たれてしまった。習近平は、アメリカが自主的に「スパイ」を摘発して叩きのめしてくれたのだから、笑いが止まらないだろう。トランプのネオコンや民主党に対する個人的な憎悪がやらせたことが、結果として中国の利益になった。
アフガニスタンやイラク戦争、そしてイスラエルのガザへの攻撃とイラン戦争という中東で起こっている一連の戦争とウクライナ戦争を含めたいまの混乱は、現代の30年戦争である。スペイン・ハプスブルク家の凋落というレジーム・チェンジになった17世紀の30年戦争のあとで、ヨーロッパの政治体制が変わってしまったように、いずれ、このイラン戦争が終わるとき、アメリカの自滅とヨーロッパの没落は回復不能に落ち込み、戦争の余波で甚大な被害を被っている「世界のすべて」は、その形を激変させているだろう。
現在の一連の戦争には、すべてユダヤ人が関係している……などと言うと「陰謀論」のように聞こえるかもしれない。しかし、イラン戦争は、強権的なイランの内政が導火線であっても、他国の国内を分断させようとするアメリカのいつもの手口が招いた戦争であり、寧ろ、CIAとモサドの合作の「イスラエル戦争」と言えるのではないか。ユダヤ問題の矛盾が行きつくところまで行ってしまったとき、たまたま籤を引いてしまった(教養に欠ける)トランプ大統領が、思い切り騒々しく「破壊」に精を出している。
少々妄想を逞しくしてみる。あれだけ「戦争を終わらせる」と繰り返していたトランプ大統領が中東で派手な戦争を始めてしまった。昨年までは関税の話ばかりだったのに、何故、急に戦争に邁進するようになったのだろう。それは、1月末に公開されたエプスタインファイルが関係しているのではないだろうか。エプスタインは、モサドの工作員か、モサドと何らかの関係があったと言われている。物質主義の政財界の大物や超富裕層たちを、カネと女で堕落させるのは簡単だったようだ。リストにはトランプ夫妻も含まれている。男なら飛びつきそうな餌に加えて、エプスタインに声を掛けられることが「特権階級の証拠」になり、「お声掛け」があること自体が自尊心をくすぐる。すべてを手に入れた者たちには、スリルとサスペンスに溢れた背徳的な快楽しか残されていないらしい。秘密の快楽の場に招待されることが「名誉」で、セレブの特権的で退廃した仲間意識が秘密を守らせる。
もし、エプスタインがモサドに関係があったなら、恐喝のネタは全てネタニヤフに握られている。アメリカの支援がなければイスラエルは終わりだ。トランプの破壊行動は、イスラエルの意思で、さらに、イスラエルを支えるアメリカのユダヤ財閥の意思なのではないか。クリントンからバイデンまでの大統領には、ネオコンの力が及んでいた。エリート集団のネオコンを嫌ったトランプ大統領も、結局ユダヤ勢力に逆らえなかったのかもしれない。
ホルムズ海峡の通行料を人民元で支払わせるイランの作戦は、中国を利してオイルダラーを弱体化させる。覚悟を決めたイランが望むのは、勝利ではなく、「負けない」ということだ。勝てない戦争だとわかっているトランプ大統領は、傷の小さなうちに停戦に持ち込みたい。それをさせないのがイスラエルである。ネタニヤフの汚職問題という個人的事情もある。アラブ世界を敵に回し、アメリカの保護を失えばイスラエルは消滅する運命にある。イスラエルはアメリカが破滅するまでアメリカを離さない。
ベロックは、ユダヤ人とヨーロッパの関係を「国家のような有機的組織の中によそ者集団がいる」ことで生じる緊張だと言った。土地に根差した文化をもつ世界中の国々は、非ユダヤ的である。放浪するユダヤ人はどこにも同化できず、金融と頭脳を武器に覇権国を寄留地にして安全を確保しようとして来た。マクニールの言う「宿主と寄生者の関係」が崩れ、アメリカの覇権が崩れていくとき、次はどこに寄留地を求めるのだろうか。
敵に囲まれたイスラエルが崩壊したとしたら、また、ディアスポラが始まるのだろうか。イスラエル問題は、一神教の世界の問題である。西洋全体が沈んでいくとき、そこに寄留していた彼らはどこへ行くのだろうか。アメリカの衰退によって、世界は暗澹とした混迷に落ち込んでいく…。
『ユダヤ人』ヒレア・ベロック著 中山理訳 渡部昇一監修 /祥伝社 2006
『シオニズム―イスラエルと現代世界』鶴見太郎著 /岩波新書 2025
『ユダヤ人の歴史』鶴見太郎著 /中公新書 2025
『ユダヤ人』J.P.サルトル /岩波新書 1956
『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』池内恵著 /新潮選書 2016
「米露中vs.欧州」基軸への移行か? 反NEDと反NATOおよびウ停戦交渉から見えるトランプの世界 | 中国問題グローバル研究所
遂につかんだ! ベルリンの壁崩壊もソ連崩壊も、背後にNED(全米民主主義基金)が! | 中国問題グローバル研究所
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